2025年12月31日 NY de Volunteer COLUMN

『NYで見つけた、私にできること〜NY de Volunteer』(7)グローバルリーダーシップ教育プログラム

ちょっとした「やってみよう」が、人と人をつなげ、地域を支えているニューヨーク。ボランティア活動でのリアルな声や、心動く瞬間をNY de Volunteer がお届けします。

私たちNY de Volunteer は、社会課題の解決に向けて自ら考え行動する「チェンジメーカー」を育てることを目的に、2003年からニューヨークで活動している非営利団体です。

NY de Volunteer は、コニーアイランドを訪れた一人の日本人女性が、あまりに汚いビーチにショックを受け、「何かできることを」と、自らの手でごみ拾いを始めたことから始まりました。連載では、活動現場での人と人との触れ合いから生まれる、さまざまなエピソードをお届けしていきます。

連載第7回では、長く家庭に軸足を置いてきた専業主婦が一歩踏み出し、運営スタッフに応募して、10月に実施された グローバル・リーダーシップ・スタディ・ツアー(Global Leadership Study Tour) のプロジェクトメンバーとして活動した経験をお届けします。

専業主婦歴15年、運営スタッフへの挑戦

40代、専業主婦歴15年の私が、NY de Volunteer の運営スタッフに応募するのは決して簡単な決断ではありませんでした。夫の大学院留学を機に仕事を辞めて来米し、その後は二人の息子の子育てに専念。身近に頼れる人のいないニューヨークで奮闘しながら、家族に尽くしてきた15年間。社会から長く離れ、家庭という小さな世界に身を置いてきた私にとって、未知の世界にその一歩を踏み出すことは想像以上に勇気のいるものでした。

ニューヨークでは子どもが小学生の間は大人が実際に行動を共にすることが一般的で、学校や習い事の送迎を保護者やベビーシッターが担い、留守番や近所へのお使いをひかえる家庭が多いように感じます。学校がある日は毎日送り迎えを続けていた私も、昨年、次男がミドルスクールへ進学し、徒歩10分ほどの学校に一人で通うようになった頃、子育てもようやく一区切りを迎えたのだと実感しました。その一方で、自分のアイデンティティについて考えるようになり、「◯◯さんの奥さん」「◯◯くんのお母さん」以外の自分が見つからないことに気づいて、ふと、焦りを覚えました。

そんな時に出会ったのが NY de Volunteer。今年の5月、勇気を出して応募し、創立者・理事である日野さんと面談をしました。日野さんは情熱にあふれ、高いプロフェッショナリズムで周囲を引き込む、まさにインスピレーションを与えてくれる存在です。面談で彼女の思いに深く感銘を受けた私はスタッフとして活動に参加することを決意しました。

当初は、「自分に何ができるのだろう」と自信を持てずにいました。それでも毎週のオンラインミーティングに参加するうちに、互いに高め合いながら情熱をもって活動に向き合う運営スタッフの姿勢に励まされ、私自身も少しずつ前向きな気持ちが芽生えていきました。NY de Volunteer では、年齢や性別に関係なく、皆がファーストネームで呼び合います。私も久しぶりにファーストネームで呼ばれたとき、自分が個人として尊重されていることを実感し、どこか新鮮で嬉しい気持ちになりました。

Global Leadership Study Tourプロジェクトメンバーに立候補

NY de Volunteerでは、新しいプロジェクトが立ち上がると、興味のあるメンバーが自ら立候補してサブグループを結成します。グループ内では主にLINEで連絡を取り合い、必要に応じてオンラインミーティングを開きながら、企画の詳細を詰めていきます。テーマによっては対面で集まり、勉強会を行うこともあります。

私が最初に担当したのは、日本の高校生を対象としたニューヨークでの企業研修プログラム「グローバル・リーダーシップ・スタディ・ツアー(Global Leadership Study Tour/以下GLST)」でした。これは、10月に研修旅行としてニューヨークを訪れる高校生のためにプログラムを企画し、受け入れ企業や旅行会社と調整を行う、いわば、オーガナイザーとして重要な役割を担うプロジェクトです。スタッフとして活動を始めてまだ間もない5月下旬、私は思い切ってこのプロジェクトの担当メンバーに立候補しました。GLSTに携わりたいと思った理由は、大きく二つありました。

一つ目は、高校生を育てる保護者として貢献できると感じたことです。 長男がニューヨークの公立高校に通っており、日頃から高校生とのコミュニケーションには慣れています。また、現地の教育事情にも詳しいことから、このプロジェクトでも役に立てるのではないかという思いがありました。加えて、日本の高校生はどんな雰囲気なのか、アメリカの高校生とはどんな点が異なるのか、その違いを感じ取ってみたいという気持ちもありました。

二つ目は、自分自身の原体験が強く重なったからです。私自身、中学3年生の修学旅行でカナダのバンクーバーを訪れ、初めての海外で現地校訪問やホームステイを経験しました。その時に抱いた「いつか英語でコミュニケーションがとれるようになりたい」という強い願いは、後の人生を大きく方向づける転機となりました。だからこそ、同じように海外で特別な体験をし、視野を広げようとしている高校生たちの力になりたい。そんな思いが自然と湧き上がってきたのです。

GLSTの準備と仲間とのチームワーク

まず初めに、受け入れ先である現地ITコンサルティング企業アバナード社と今年6月初旬にキックオフミーティングを実施しました。担当メンバーの自己紹介と簡単なスケジュール確認を行い、プロジェクトの第一歩を踏み出しました。外部企業との英語ミーティングでしたが、長年の海外子育ての中で英語でのやり取りに慣れていたこともあり、思ったほど緊張せず、初回のミーティングを無事に終えることができました。

アメリカでは、学校の先生との個人面談やPTAミーティング、学校説明会、スポーツチームの連絡会など、専業主婦であっても英語できちんと自分の意見を伝えたり質問したりする場面が日常的にあります。日本で生まれ育った私は、渡米当初は遠慮しがちで、本心がうまく伝わらないこともありました。それでもアメリカでの子育てを通して少しずつ経験を重ねる中で、こちらでのコミュニケーションのコツを身につけてきました。

ただし、今回のミーティングには、家庭や学校を舞台に重ねてきた日常的なコミュニケーションとはまったく異なる難しさがありました。協力企業であるアバナード社はITコンサルティング企業。参加してくださる社員の方々は、多忙な業務の合間を縫ってボランティアとして関わってくださっており、限られた時間内で的確に議論を進める必要がありました。コンサルティング企業ならではの判断の速さ、次々と展開される議論のテンポ、さらにビジネス英語のスピード感に、思わず圧倒される瞬間もありました。

だからこそ、アバナード社とのミーティングでは、事前にアジェンダをしっかり準備し、論点がぶれずに進むよう工夫しました。不明確な部分はそのままにせず、必ず確認を取ることで、コミュニケーションのズレを防ぐよう努めました。さらに、議事録を丁寧に整理し、運営スタッフ間で共有することで、次のステップへスムーズにつなげられるよう心がけました。

当日に行うアイス・ブレイク・アクティビティ(参加者同士の緊張をほぐし場を和ませる簡単な交流ゲーム)については、NY de Volunteer 担当メンバー3人でオンラインと対面の打ち合わせを重ね、アイデアを出し合って準備しました。私より若い世代のメンバーたちは、デジタルツールを上手に取り入れながら手際よく作業を進めていき、その姿勢からは学ぶことが多くありました。マルチタスクに長け、コミュニケーション力にも優れた彼女たちからは質の高いフィードバックが次々に生まれ、意見交換を重ねるたびに新しい視点を得ることができ、チームで過ごす時間はとても刺激的でした。

また、現役高校生の息子にもアドバイスをもらい、日本から来る高校生向けに一問一答形式の英語カードゲーム用の質問を20問作成しました。デザインが得意なメンバーがカードを美しく仕上げてくれたことで、チームの一体感も高まりました。さらに、修了証の印刷や免責書類の準備、出席者リストの作成といった事務作業から、旅行会社やゲストとの連絡調整まで、担当メンバー全員で綿密に確認しながら全てを早めに進めました。アバナード社との打ち合わせやNY de Volunteer 内部ミーティングも頻繁に行い、ゲスト対応、当日のボランティア対応、タイムスケジュールに至るまで細部を詰めていきました。

カードゲームのデザインと印刷は、アートやデザインを得意とするメンバーが担当しました
折りたたんだ20枚のカードを袋に入れ完成。おしゃれな仕上がりに

10月3日 GLST当日の様子

そして迎えた当日。NY de Volunteer チームで事前準備をしっかり整えていたおかげで、焦ることもなく、落ち着いた気持ちで高校生たちを迎えることができました。オフィスに到着すると、緊張した面持ちの生徒たちに対し、できるだけ分かりやすい英語で話しかけるよう心がけました。生徒たちは笑顔で一生懸命英語で返してくれ、少しずつ場の空気が柔らいでいくのを感じました。

用意していた一問一答のアイス・ブレイク・カード・ゲームでは、皆がはきはきと回答してくれました。たとえば「ニューヨークで見た、最もニューヨークらしいものは?」との質問に、「Statue of Liberty!」と笑顔で即答する生徒もいて、楽しそうにカードを引きながら答える姿に、緊張が解けていく様子がはっきりと見て取れました。ファシリテーターを務めてくださったアバナード社のローカル社員からも、「高校生向けに作られた質問だからこそ答えやすく、とてもよくできているね」とうれしい言葉をいただきました。

その後も、アバナードのボランティア社員の皆さんと一緒に準備してきた各セッションは順調に進行し、生徒たちを見送るころには、長いようであっという間だった一日が静かに幕を閉じました。生徒たちからは、「英語をたくさん話せて楽しかった」「もっと英語を上達させたい」「将来は海外で働きたい」など、前向きな感想が数多く寄せられ、少しでも貢献できたことがとてもうれしかったです。

GLST当日、秋の澄んだ青空が広がっていたオフィスビル

終日のプログラムを終え、アバナード社が入る高層ビルを出て、秋の澄んだ空気を深く吸い込みながら青空を見上げた瞬間、30年前のカナダ修学旅行で感じたあのインスピレーション、「英語でコミュニケーションが取れるようになりたい」という思いが、静かにふっとよみがえってきました。あの時の気持ちに背中を押されるように、私はその後、英語の勉強に力を注ぎ、少しずつ壁を越え、今では英語で人と関われるようになりました。「いつか話せるようになりたい」と思っていた英語を使って、未来の日本を担う高校生たちのサポートが微力ながらできた。そのことに、私は大きな達成感を感じました。そして、最後までサポートしてくださったNY de Volunteer の理事メンバー、高い志と豊かな才能を持つプロジェクトメンバーと同僚スタッフに心から感謝しています。

事前準備から当日まで温かくサポートしてくれた寺田理事と、プロジェクトメンバーの仲間たち

最後に:見えないところで育っていた、私のスキル

「キャリアブランクが長すぎる私は何もできない」と思い込んでいた自分。しかし、子育ての15年間で自然と身に付いたスキルは、GLSTの準備や当日の運営に確かに役立っていました。世界各国からの生徒が集まるマンハッタンの公立学校での積極的なコミュニティー参加で磨いたコミュニケーション力、多様性への理解、異文化間で誤解を生まないための調整力。さらに、学校行事や学内ボランティアに関わる中で自然と身に付いていた段取り力や、先を見越して支えるフォロー力も、今回のプロジェクトを支える大切な力となりました。これらは、保護者の積極的な関与が求められるアメリカでの子育て、そして多文化都市ニューヨークでの暮らしを経験したからこそ身に付いたもので、日本で子育てをしていたら得られなかったかもしれない貴重な財産だと、改めて感じています。

「◯◯さんの奥さん」「◯◯くんのお母さん」ではなく、自分の名前で呼ばれる居場所ができたこと。情熱あふれる仲間と共にさまざまなプロジェクトで社会に貢献できる。その喜びを大切に、これからも前へ進んでいきたいと思います。


Maiko(NY de Volunteer 運営スタッフ)

NY de Volunteerでは一緒に活躍してくれる仲間を募集しています。新たな一歩を一緒に踏み出してみませんか?興味のある人はこちらからご連絡ください。

運営スタッフ募集

NY de Volunteer

市民の社会参加やボランティア活動を推進し、グローバルリーダーの育成を通じて、社会課題の解決に向けて自発的に考え、行動する「チェンジメーカー」を社会に送り出すことを目的に、2003年から活動する非営利法人。公式SNSでは、ニューヨークでのボランティア活動の魅力や、イベント情報を配信中。フォロー&いいね!をお待ちしています。

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