
第十代学院長 巽 孝之
あけましておめでとうございます!
慶應義塾ニューヨーク学院が開校したのは1990年ですから、今年で36周年。ニューヨーク市からメトロノースで40分ほど郊外へ赴いたところにあるウェストチェスター郡パーチェスで産声を上げました。慶應義塾の一貫教育系列が擁する五つの高等部のうち、唯一海外に存在する学校です。
21世紀に入ってからは、日本からの受験生も受け入れるようになったので、約300人の生徒の内訳は、北米などからの入学者と日本からの入学者がちょうど半々といったところでしょうか。基本的に全寮制ですが、1割弱は通学生です。
2001年以降、ニューヨーク州私学連盟(NYSAIS)の認定を受けていますので、日本の高校でもありアメリカの高校でもある、という二重のステータスを維持しています。そのため卒業生の9割以上が学院長推薦で慶應義塾大学の各学部へ入学するものの、毎年少数とはいえ、コロンビア大学やニューヨーク大学にも進学します。
開校当初より、英語と日本語のバイリンガル、日米のバイカルチュラルをモットーに、授業の9割が英語、残りの1割である国語と日本史の授業だけが日本語で行われてきました。コロナ禍末期の22年に私が赴任してからは、慶應義塾執行部と討議した結果、日米慶應の三つの柱から成るトライカルチュラル(Tricultural)を、近代日本の父・福澤諭吉先生の精神に則り新たなミッションに定めました。

福澤先生は言うまでもなく慶應義塾の創設者です。その生涯で二度もアメリカを訪問し、1867年にはニューヨークにも滞在して「独立宣言」に始まる近代民主主義の成果を「独立自尊」に象徴される日本的概念として巧みに移し替え、いわば日米の架け橋となった人物です。そんな福澤先生の環太平洋的な想像力を讃える意味で、日米のみならず慶應義塾そのものの国際的伝統を体得し、世界の先導者の卵を育てていくのが、バイリンガル、トライカルチュラル教育の目的です。
幸い優秀な教職員を得て、生徒たちは勉学やクラブ活動に精を出すばかりでなく、毎月のように行われる行事も主体的かつ積極的にプロデュースしています。春には桜並木が満開になる季節に文化祭である祥風祭が開かれ、体育祭、音楽祭といった恒例行事が盛りだくさんです。ジャパンデーでのパレード参加や、アイビーリーグなど著名大学の教授や作家、芸術家を招き、大学レベルの講演を行なうシリーズ企画も好評を博しています。
教職員たちと生徒たち、さらには保護者たちが一体となってつくる慶應義塾ニューヨーク学院。そこには、まさに地上の楽園が拓けています。その印象は、私の赴任以来5年目に入った今もなお、全く変わりません。

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