アメリカで1月27日から、MetaやYouTubeなどの巨大SNS企業を相手取った「子どもの安全」をめぐる歴史的裁判が始まった。今回、米国で争われているのは、「SNSは偶然ではなく、意図的に子どもを依存させる設計で作られていたのではないか」という点だ。この問いは、日本の家庭にとっても決して他人事ではない。この裁判の行方次第では、世界のSNSビジネスモデルそのものが揺らぐ可能性がある。

■ 原告は20歳の女性(K.G.M.)
最初の裁判は、カリフォルニア州のロサンゼルス上級裁判所で行われる。原告は、現在20歳のカリフォルニア州在住の女性で、訴訟ではイニシャルの K.G.M. として匿名で表記されている。
K.G.M.は、8歳でYouTube、9歳でInstagram、10歳でMusical.ly(現在のTikTok)、11歳でSnapchatを利用し始めた。訴状によれば、幼少期から複数のSNSを日常的に使う中で依存状態に陥り、その結果、不安や抑うつ、ボディイメージの問題に苦しむようになったとされている。この裁判は6〜8週間にわたって続く見込みで、Meta(旧フェイスブック)最高経営責任者(CEO)のマーク・ザッカーバーグを含む、SNS企業の経営幹部が証言する可能性もあるとされている。
■ この裁判は、今後のSNS業界の未来を左右する試金石
今回のK.G.M.の訴訟は、今後の同様の裁判の行方を左右する「ベルウェザー(試金石)」と位置づけられている。すでにアメリカでは、個人だけでなく、学区や州政府(司法長官)などによる訴訟が数千件規模で起こされており、今回の裁判の結果が最初の裁判として注目されている。
さらに今夏には、カリフォルニア州オークランドの連邦裁判所で別の裁判も予定されている。そこでは、SNSが「公衆の迷惑(パブリック・ニュイサンス)」に当たるかどうかが争われ、教育現場や州政府が、SNS依存によって生じた若者の治療や対応のコストを負担させられている、という点が焦点となる。
■国によって考え方が異なる。日本は?
子どもとSNSをめぐる対応は、国や地域によって大きく異なる。オーストラリアでは、16歳未満のSNS利用を原則として禁止する法律が導入され、利用そのものに強い制限をかける踏み込んだ対応が取られた。
一方、日本では、青少年インターネット環境整備法などによりフィルタリングの努力義務は定められているものの、SNSの設計や依存性そのものを直接規制する法律はなく、利用の可否や管理は主に家庭や学校の判断に委ねられているのが現状だ。
これに対し、米ニューヨーク州では、無限スクロールや動画の自動再生など、依存性が高いとされる機能について、精神的健康へのリスクを知らせる警告表示を義務づける法律が成立した。
今回の裁判が問いかけているのは、子どものSNS依存を「家庭や本人の問題」として片づけてよいのか、それとも、そうした利用を前提に設計されたサービスを提供してきた企業側にも一定の責任があるのか、という点である。日本では依然として、子どものSNS利用は家庭内の管理やしつけの問題として受け止められることが多いが、世界ではすでに、企業の役割やビジネスモデルそのものを社会的責任の観点から問い直す動きが始まっている。私たち日本人にとっても、子どものSNS利用を「家庭だけの問題」として抱え込むのではなく、社会全体の設計や仕組みの問題として捉え直す時期に来ているのかもしれない。
文/藤原ミナ
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