夏休みは、普段よりまとまった時間を使って勉強に取り組める時期です。一方で、頑張っているからこそ、「思ったほど成果が見えない」と不安になることもあります。しかし、勉強の成果は、努力してすぐに表れるとは限りません。今回は、結果になる前に積み重なっている「見えない成長」に目を向けてみたいと思います。
6月号では、夏休みという「期限」を使って、「この夏に何を成し遂げるか」という目標を持つことについてお話しました。実際に夏休みを迎え、「毎日単語を覚えている」「苦手な算数に取り組んでいる」「本を何冊も読んでいる」など、それぞれの目標に向かって頑張っている子どもたちも多いと思います。
ところが、ここでよく聞くのが、「こんなにやっているのに、成績が上がらない」といった不安や疑問です。子ども本人だけでなく、保護者も同じように感じることがあります。毎日勉強している。宿題もやっている。以前より机に向かう時間も増えた。それなのにテストを受けてみると、点数はそれほど変わっていない。そうなると、「勉強方法が間違っているのではないか」「もっと別のことをやらせた方が良いのではないか」と心配になるものです。
しかし、学力の伸びは、いつも右肩上がりに表れるわけではありません。新しいことを覚え、それを理解し、自分で使えるようになるまでには時間がかかります。特に算数や国語、そして帰国生にとっての日本語や英語は、昨日覚えたことが今日すぐに点数になるとは限りません。知識や経験が少しずつ積み重なり、ある時、それらがつながった瞬間に一気にできるようになることがあります。
私は、子どもの成長には「見える成長」と「見えない成長」があると思っています。テストの点数が上がった、問題を解くスピードが速くなった、英単語をたくさん覚えた。これは「見える成長」です。一方で、以前より長く集中できるようになった、間違えた問題を自分で直そうとするようになった、分からないことを質問できるようになった、といった変化は、点数にはすぐ表れないかもしれません。しかし、こうした「見えない成長」こそ、その後の大きな伸びにつながる大切な土台です。
帰国生の学習でも同じことが言えます。例えば、日本語の文章を読むことに苦労していた子どもが、毎日少しずつ読書を続けていたとします。すぐに国語の点数が上がらなくても、読むスピードが少し速くなったり、知らない言葉の意味を前後から考えられるようになったりしているかもしれません。英語でも、語彙や文法を学び直すことで、これまで感覚で理解していたものを正確に説明できるようになることがあります。こうした変化が積み重なった先に、やがて点数という目に見える結果がついてきます。
だからこそ、頑張っているのに結果が出ないときに大切なのは、すぐに「やっても意味がなかった」と判断しないことです。ただし、続けていれば何でも良いというわけでもありません。一度立ち止まって、「できるようになったことは何か」「まだできていないことは何か」を振り返ることも必要です。結果だけを見るのではなく、その途中にある小さな変化を見つけること。それが、次の学習につながります。
家庭でも、「何点だった?」と結果だけを聞くのではなく、「最近、前よりできるようになったことは何?」と聞いてみてください。そして、小さな変化に気づいたら、ぜひ言葉にして褒めてあげてください。「前より集中できるようになったね」「自分から直しをするようになったね」と、結果ではなく努力や行動の変化を認めることが大切です。子ども自身が自分の成長に気づき、それを周囲からも認めてもらうことで、「もう少し続けてみよう」という気持ちが生まれます。
努力しているときほど、成果を急ぎたくなるものです。しかし、成長にはそれぞれのタイミングがあります。できなかったことだけではなく、積み重ねてきたもの、身に付き始めた習慣、以前の自分から少し変わったところにも目を向けてみてください。
目に見える結果が出る前にも、子どもは確かに成長しています。
早稲田アカデミー ニューヨーク校
https://www.waseda-ac.co.jp/abroad/school/newyork.html
早稲田アカデミーNY校 川村宏一(かわむら こういち)

早稲田アカデミーUSA取締役・NY校現地代表。2002年に早稲田アカデミーに入社後、校舎で7年間にわたり講師を務め、その後、高校受験部門にて英語科目の責任者を担当。現在の早稲アカ英語科システムの礎を築いた後、国際部に異動し、英語専門校舎の統括責任者に就任。2023年3月から現職。早稲田アカデミーの教育理念である「本気でやる子を育てる」を、海外においても実践している。問い合わせは(メール:newyork@waseda-academy.com)まで。












