「まだFacebook使っているの?」「Amazonで買ってるんだ〜」とアメリカ人が私のスマホ画面をのぞいては、冗談ぽく言う。私の周りでは、Facebook、Instagram、WhatsApp、X、Amazonのアカウント停止が話題になっている。


私は、ご近所の友人7人と、WhatAppグループを停止し、テキストメッセージに移動した。「デリートしたよ」と互いにメッセを送る。彼らはすでに長いこと、ほかのSNSもやっていない。
まずはメタのマーク・ザッカーバーグCEOが1月上旬、アメリカ国内のFacebookでファクトチェックをしないと発表。従来のファクトチェックは「検閲」に値するとした。それに抗議して若い人がメタ傘下のFacebook、Instagram、WhatsAppのアプリを消し始めた。米メディアによると、新ルールになると、個人を中傷・攻撃し、違法行為につながるような投稿も急増すると予想される。若い人は、そのようなSNS空間には「耐えられない」と言う。
また、メタ社内でチーフ・ダイバーシティ・オフィサーの職を廃止し、「多様性・公平性・包括性(DEI)」の方針をも廃止するとした。DEIが当たり前として育ったZ世代などはこれに反発する。
一方で、アメリカで1億7千万人が使うTikTokが1月18日夜、ブラックアウトしてアプリが使えなくなった。「ソーリー、TikTokは今使えません」というポップアップが出て、友人からは「こんなことが許されるのか」「寂しい」というテキストが届いた。ブラックアウトは、中国企業バイトダンスが所有するTikTokを、国家安全保障上の理由で禁止する法律が施行されたためだ。
しかし、トランプ氏が翌19日、この法律の施行を遅らせ、猶予を与えると約束。アプリが再開した。20日のトランプ氏の大統領就任式には、TikTokのCEOが駆けつけ、これも若い人の気持ちを逆撫でした。
Amazonに対する不満は、会長のジェフ・ベゾス氏が原因だ。所有するワシントン・ポスト紙が、大統領選挙戦中、民主党候補のカマラ・ハリス副大統領(当時)を「推薦」する社説を準備したところ、ベゾス氏が差し止めた。これに抗議して、約30万人がポストのデジタル購読を解約した。Amazon Primeの更新が来たら止めようという人もいる。
ザッカーバーグ氏、ベゾス氏、X のオーナーであるイーロン・マスク氏はまた、トランプ氏の大統領就任式にそれぞれ100万ドル(1億5600万円)ずつ寄付。就任式の特等席にも顔を連ねた。ビジネス界が共和党政権に規制緩和をして収益を上げようと考えるのは当たり前だが、あまりに急な「迎合」に批判が集まっている。
私はFacebookなどを使い続けているが、今後は心して事実に基づいた、正しい内容の投稿をしていこう。

津山恵子 プロフィール
ジャーナリスト。専修大文学部「ウェブジャーナリズム論」講師。ザッカーバーグ・フェイスブックCEOやマララさんに単独インタビューし、アエラなどに執筆。共編著に「現代アメリカ政治とメディア」。長崎市平和特派員。元共同通信社記者。
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