トランプ関税によって株価は暴落し、世界は大混乱に陥っている。しかし、これに対して、個人がどうしたらいいのかは、正直、わからない。ただ、私が言えるのは、こうなることを早くから予想していたことだけだ。経済の専門家たちは、ああでもない、こうでもないと言っているが、いまさら、分析・解説しても意味はない。
そこで、今回は、こんな事態に陥った「Woke」(ウォーク:意識高い系)の行き過ぎついて考察する。リベラルが、トランプのような「ポピュリスト右派」に敗退したのは、「Woke」による「Political Correctness」(ポリティカル・コレクトネス:政治的中立性)、「DEI」(ディー・イー・アイ:多様性、公平性、包括性を実現すること)に、人々が嫌気がさしたからだ。
それを象徴する出来事が、現在、起こっている。封切られたディズニーの『白雪夢』の実写映画の大コケである。はっきり言って、これは本来の『白雪夢』とは、まったく別の物語だ。
なぜ、ディズニーはこんな映画をつくってしまったのだろうか?
巨額制作費の実写版『白雪姫』が早くも大コケ
ディズニーが総額推定2億7000万ドルという巨額の製作費を投入して鳴り物入りで公開した実写版映画『白雪姫』(Snow White)が、大コケしている。
3月末に、日米ほぼ同時に封切られたが、すぐに失速、いまや、いつ打ち切りかが囁かれている。
映画の興行成績を調査する「ボックス・オフィス・モジョ」によると、公開後初の週末の興行収入は、北米で4220万ドル(約63億円)。これは、これまでに実写化されたディズニー映画としては異常に低い。『美女と野獣』(Beauty and the Beast)は1億7475万ドル、『リトル・マーメイド』(Little Mermaid)は9557万ドル、『アラジン』(Aladdin)は9150万ドルだから、興行的には大失敗である。
すでに、公開2週目、3週目となったが、1週目から大幅にランクダウンしている。
オリジナル版の『白雪姫』(アニメ)は1937年に公開された作品で、ディズニー初の長編映画第1作。世界初の長編アニメーション作品で、ディズニーにとっては、記録的な興行成績を記録した作品である。それが、実写版になると、この体たらく。そのショックは、計り知れない。
次作『塔の上のラプンツェル』が制作停止
ディズニーは、先日、次に予定していた実写版映画『塔の上のラプンツェル』(Tangle)の制作を、一時停止すると発表した。これは、2011年のアニメ映画『塔の上のラプンツェル』を基にした実写リメイク版で、すでに脚本、監督が決まっていたが、制作は見送られた。
言うまでもないが、『白雪姫』が大コケしたのが、制作中止の原因である。これにより、アニメ映画を実写化するディズニーの戦略は、見直しを迫られるだろうとアメリカのメディアは伝えている。
では、なぜ『美女と野獣』『アラジン』などで成功を収めた実写版戦略は、『白雪姫』で通用しなくなったのだろうか?
そのもっとも単純な答えは、「つまらない」からである。私は、孫がディズニー映画を楽しむ年齢でもあり、また、公開までにいろいろと物議をかもしたこともあり、好奇心で見に言ったが、正直、本当につまらなかった。これが『白雪姫』なのかと、目を疑った。私が知っている『白雪姫』とは、まったく違う物語になっていたからだ。
主演女優がラテン系で「黒雪姫」と揶揄される
『白雪姫』は、これまでいろいろ報道されてきたように、制作段階からさまざまなトラブルがあり、そのたびに批判、非難、物議を醸し出した。
まず、なんと言っても、主演女優にラテン系女優のレイチェル・ゼグラー(23)がキャスティングされたこと。
レイチェル・ゼグラーは、ニュージャージー州ハッケンサックの出身。母親は南米コロンビアからの移民の娘で、父親は東欧ポーランドからの移民の家系で、自らを「ラティーノ・アメリカン」としていた。
そのため、2021年6月にキャスティングが発表されると、本来の『白雪姫』の世界観を犠牲にしてまで「多様性」(Diversity)を推進するディズニーの「Woke」(意識高い系)の制作者による運動だとの反発が起き、「ポリコレ」(Political Correctness:ポリティカル・コレクトネス)が過ぎると批判された。
そうして、なんと、「黒雪姫」(Snow Black)と揶揄された。
この続きは5月8日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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