「フェイクニュースにだまされない自信がない」と答えた人が49%という調査結果を見た(紀尾井町戦略研究所調べ、今年4月、日本国内男女1000人)。「自信がない」が約5割ともなれば、私もあなたも含まれる可能性が高いという、かなりショックな数字だ。
フェイクニュースに接する頻度は、舞台となるソーシャルメディアでは、かなり高い。日本で偽・誤情報を「週1回以上」(毎日+ほぼ毎日+最低週1回)見かけた割合は48.0%でこれもほぼ半数だ(みずほリサーチ&テクノロジーズ調べ、2023年)。アメリカはさらに高く69.2%だ。
私が最近、危うく引っかかりそうになったフェイクニュースが、新ローマ教皇レオ14世についてのソーシャルメディア投稿だ。初のアメリカ人教皇で、移民や労働者の味方とあってフランシスコ前教皇同様、カトリック教会ではリベラル派との見方が流れた。

ソーシャルメディアで、5月7日に始まったコンクラーベ(教皇選挙)直後から見た投稿は以下だ。
「苦しみの中で眠り続ける世界で『目覚めた(ウォーク)』と言われることは侮辱ではない。ウォークというのは、情けによって目が開かれているという意味だ。(中略)目覚めよう。愛しなさい」
という文句が、正装したレオ14世の写真に被さっている。「うわ、就任早々、トランプ大統領に喧嘩を売っている」と驚いた。
ウォーク(woke)は、トランプ氏と支持者らが、リベラル派を揶揄する言葉だ。「反アメリカ的」「ポリティカリー・コレクトを主張する過激リベラル」といった意味。その言葉を新教皇が使ったとあって、たちまち「ウォーク教皇」という言葉が拡散した。
しかし、カナダの通信社、カナディアン・プレスやファクト・チェック機関が前出の「ウォーク発言」は、AI(人工知能)を使って生成されたフェイクニュースだと発表。レオ14世は就任前後にこうした発言は一切していないという。
私自身がこれを信じそうになったばかりではない。私と似たニュースジャンキーの友人がこのフェイク投稿をシェアしていた。私がフェイクニュースだと気がついたのは、出所を知りたくてニュース検索をしたため、カナディアン・プレスのファクトチェック記事を発見した結果だ。
フェイクニュースに接する頻度、そして見分ける自信があるなしにかかわらず、それは私たちの生活に当たり前のように存在している。簡単になんでも信じないようにしたい、という恐ろしい世界に私たちは生きている。
前出の調査の内訳は、フェイクニュースを見分けるのに「あまり自信がない」が41.7%、「自信がない」が8%。「ある程度自信がある」(37.0%)、「自信がある」(4.7%)。「だまされない」と思っている人よりも自信がない人の割合が上回った。
(津山恵子)

津山恵子 プロフィール
ジャーナリスト。専修大文学部「ウェブジャーナリズム論」講師。ザッカーバーグ・フェイスブックCEOやマララさんに単独インタビューし、アエラなどに執筆。共編著に「現代アメリカ政治とメディア」。長崎市平和特派員。元共同通信社記者。
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