2025年6月3日 小山 尚彦 COLUMN

慶大教授、小山尚彦が導くAIの世界 その2、AI最前線:進化する機能と活用法

産業革命を起こす勢いで進化中のAI。慶応義塾大学WPI Bio2Q特任教授の小山尚彦(こやまたかひこ)が、いまさら聞けないAIの基礎知識から最新のコンピューティング情報まで、分かりやすく解説。

小山尚彦(こやま たかひこ)慶応義塾大学WPI Bio2Q特任教授。1999年コーネル大学において物理学博士号を取得。武田薬品工業、IBMワトソン研究所を経て現職。専門はAIとQuantum Computingのライフサイエンスへの応用。武田薬品工業ではがんや中枢薬の研究、リード最適化などを行った。2014年にIBMワトソン研究所でワトソンゲノム解析のリーダーとなる。20年に発表した新型コロナウイルスの論文が中国科学院より先に発表され話題となる。大阪府出身。


日進月歩のAI技術

AIアシスタントの世界は驚くべき速さで進化し続けています。AIの進化は「日進月歩」という言葉がぴったりで、数カ月前にはできなかったことが今日では標準機能となっています。

主要AIアシスタントの比較

ビジネス応用の可能性:具体的な活用シーン

1. マーケットリサーチと競合分析
最新のAIアシスタントは、市場調査と競合分析を大幅に効率化します。例えば、特定の業界の市場規模、成長率、主要プレイヤー、最新トレンドなどを短時間で調査できます。
■具体的な活用例
・新規参入を検討している市場の詳細分析レポート作成
・競合他社の製品・サービス・価格戦略の比較表の自動生成
・ソーシャルメディア上での自社・競合製品の評判分析
■ビジネス効果
・調査コストの削減
・意思決定サイクルの短縮
・より頻繁な市場動向チェックによる機会損失の防止

2. コンテンツマーケティングの効率化
AIを活用することで、マーケティングコンテンツの企画から制作、最適化までの全プロセスを効率化できます。
■具体的な活用例
・ターゲット顧客向けのブログ記事やホワイトペーパーの下書き作成
・既存コンテンツのSEO(サーチエンジン最適化)提案
・ソーシャルメディア投稿の一括生成と最適化
・メールマーケティングキャンペーンのA/Bテスト文案作成
■ビジネス効果
・コンテンツ制作時間の削減
・多言語展開の容易化(翻訳・ローカライズ支援)
・コンバージョン率の向上

3. カスタマーサポートの強化
AIを活用したカスタマーサポートは、応答時間の短縮と顧客満足度の向上に直結します。
■具体的な活用例
・FAQ自動生成と常時更新
・カスタマーサポート担当者向けの応答テンプレート作成
・問い合わせ内容の自動分類と優先順位付け
・過去の対応履歴を学習した顧客固有の回答提案
■ビジネス効果
・一次対応の自動化による人件費削減
・平均応答時間の短縮
・カスタマーサポート品質の標準化と向上

4. データ分析と意思決定支援
AIは膨大なデータから意味のある洞察を導き出し、経営判断をサポートします。
■具体的な活用例
・社内データの分析と傾向把握
・四半期報告書や年次報告書の自動要約と重要ポイント抽出
・売上予測モデルの構築支援
・複数シナリオに基づくビジネス戦略の評価
■ビジネス効果
・データドリブンな意思決定の促進
・専門知識がなくても高度な分析が可能に
・市場変化への俊敏な対応能力の向上

5. 製品開発とイノベーション
■具体的な活用例
・製品アイデアのブレインストーミング支援
・ユーザーフィードバックの分析と製品改善点の抽出
・市場ニーズに基づく新機能の提案
・特許調査と知的財産戦略の立案
■ビジネス効果
・製品開発サイクルの短縮
・市場ニーズとのフィット向上による製品成功率の向上
・R&D投資対効果の最大化

ChatGPTで作成したビジネスシーン利用のinforgraphics。よく見ると文字が変ですが、ここまで、イラストなども作成できるようになっています(あえて、修正していません) 。

具体的な活用例

1. アメリカでの主要な即席めんの分析とSNSでの口コミのまとめ

2. 円ドル為替予測: chatGPT o3モデルによる円ドル為替の予想(5月13日実施)

プロプランの活用

日常的にAIを活用したい方には、いずれかのサービスの有料プラン(月額約20ドル程度)への加入がおすすめです。有料プランでは、より高性能なモデルへのアクセス、利用制限の緩和、優先的な処理速度など、さまざまな特典が得られます。

注意点 ハルシネーション(幻覚)について
AIの活用において常に留意すべき点として、「ハルシネーション」と呼ばれる現象があります。これは、AIが実際には存在しない情報を事実であるかのように提示してしまうことです。特に具体的な数値データや、最新の専門分野の情報を求める場合は、AIの回答を鵜呑みにせず、複数の情報源で確認することが重要です。以下に有名な例を3点挙げておきます。

■Google Bard公開デモ(2023年2月)

新発表イベントで Bard が「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が史上初の系外惑星を撮影した」と誤回答し、その報道を受けて Alphabet の株価は8%下落、時価総額が一時約 1000 億ドルの消失。

■Mata v. Avianca, Inc 訴訟(2023年5月)

弁護士が ChatGPT で作成した訴状に架空の判例を引用し、連邦地裁から制裁金。

■名誉毀損ハルシネーション(2023年4月)

ChatGPT がラジオパーソナリティーのマーク・ウォルターズ氏を横領犯だと捏造した。生成 AI の誹謗中傷リスクが大きく報じられた。

次回予告 マルチモーダルAIの世界へ
次回は、テキストだけでなく画像、動画、音声を理解・生成できる「マルチモーダルAI」の最新動向について詳しく解説します。お楽しみに!

                       
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