「スピークイージー」(隠れ家バー)の宝庫とも呼べるニューヨーク。ガイドブックを見て訪れるのもいいが、この体験ばかりは誰かのおすすめ伝い、またはフラッと歩いていた時に出会いたかったり、なんだか風情を感じたかったりするもの。今回は、そんなスピークイージーに悩める人たちのため、チャイナタウンにあるバーを紹介したい。

昼は多くの露店、商売人や買い物客で賑わっているが、夜6〜7時頃になると静かな(でもまだカラフルな)街へと変わっていくマンハッタンのチャイナタウン。バー「Apotheke Chinatown」はそんな夜のチャイナタウンで異彩の存在感を放ち、扉の先にさらなる「魅惑の世界」を持つ場所なのだ(店舗情報は記事の最後に)。
◆ とにかく怪しい扉を開けると…
メインストリートを抜け、カラフルな提灯が連なる裏路地「Doyers Street(ドイヤーズ・ストリート)」にある同バー。もちろん看板は無く、ただの黒いドアが佇んでおり、見方によっては昔の骨董店とも捉えられるが・・・とにかくちょっぴり怪しい見た目が目印。もし確証が持てなければ、店の前にイカツめのセキュリティが座っているので、IDを見せる前に「ここが例の?」と尋ねて見てほしい。
そしていよいよ、強面な印象の扉を開けると・・・映画「グレート・ギャッツビー」の時代に出てきそうな豪華絢爛なヨーロピアン調のバーカウンターが目に飛び込んできて、暗い店内にはボルドーのベルベッドソファーが点在している。
“頭を打って違う世界にいった” 日常でなかなかこんなフレーズを使う時はないが、このバーで扉を開けた瞬間というのは、この言葉以外ではなかなか形容しずらい。そして “頭を打った” あとは、カクテルで陶酔。とあるプロのジャズミュージシャンたちも「ここのカクテルは最高だよ」と太鼓判を推すほど、カクテルのクオリティがものすごく高いのだ。
◆ 「処方箋」のようなユニークなカクテル
メニューを見ると、ジャンル別に分かれており「健康と美容」「ストレス緩和」「痛み止め」・・・そう、この店「Apotheke」の由来は、薬局を意味する「Apothecary」。カクテルメニューはジョークを交えた処方箋となっているのだ。ではちょっと「痛み(心の・・・)」があるので、「痛み止め」コーナーを見てみよう。
“Dead Poet(死んだ詩人)” はエスプレッソ入りバーボン、ライウイスキー、百味胡椒、黒クルミの殻、アガベシロップ、燻製クローブから成るカクテル。なんだか痛みを緩和というよりも、苦味をあえてもう一度楽しむといった雰囲気が漂っているが、処方箋ならば仕方がない。
◆ おすすめの曜日は? ジャズの生ライブも
といった風に、カクテル1杯からも様々な想像を掻き立てれ、バーの雰囲気とも相まってまさに異世界に「飛ぶ」ような感覚になれる。そして筆者がおすすめなのは火曜日。1週間を通して様々な音楽ライブも行われている同店。特に火曜の夜10時頃からは、ブルックリン生まれのブラスバンド「HIGH AND MIGHTY BRASS BAND」がオリジナル曲、そして誰もが知る名曲をアレンジしてバイブス高めに響かせてくれ、気がつくと初めは座って聞いていた人々も次第に立ち上がり、ちょっとしたお祭りのような雰囲気になることも。
女子友達とのスピークイージー巡りにはもちろん、ファーストデートで意中の彼女/彼を連れてきてもかなり高得点が狙えると思う。自分の話術に自信がなくても大丈夫、きっとこのバーが助けてくれるから。

文・写真/ナガタミユ
Apotheke Chinatown
住所
9 Doyers St
営業時間
18:30〜2:00
公式サイト
https://www.apothekemixology.com/
公式インスタグラム
https://www.instagram.com/apothekenyc/
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