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金融街の小さな仕事場で時計職人として長年働いてきたアル・マドックスさんは、今年90歳になる。携帯電話のない時代には、時計が唯一時間を確かめる道具であり仲間の職人もたくさんいたが、「皆廃業するか引退するか、あるいは死んでしまった」という。現在、マドックスさんは自分を「最後の生き残り職人」と呼んでいる。
「子どものころ父親の時計を分解してみたら、たくさん部品があり難解な作りだったが、それを組み立てていくのはとても面白かった。その後ブルックリン区の職業技能教育高校の時計学科を卒業し、時計職人の道を歩み始めた」。市内の宝石商で腕を磨いたあと、1949年に自分の店をフルトン通りに出し、その後に数回移転して、1990年代から現在のパーク・ロウで営業を続けている。
マドックスさんの仕事場の壁は、新聞の切り抜きや写真、数々の時計部品で埋め尽くされている。これまで何千ドルもするロレックスやビンテージ時計なども修理してきたが、現在職人の目で見て投資の価値ありと思えるのは、ブローバとセイコーのクオーツだと話す。
個人的な顧客だけでなく、デパートや宝石商の仕事も請け負うマドックスさんは、毎日3時半になると店を閉め帰宅する。そろそろ引退では?と聞くと「仕事が楽しいからまだ辞めたくないね」と答えている。
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