トランプ大統領が5カ月前に発令した大統領令「英語公用語宣言」により、英語力が不十分(limited-English Proficient=LEP)な約200万人のニューヨーク市民が、医療、住宅、教育、緊急対応などの重要な公共サービスへのアクセスにおいて重大な格差に直面していることが、ニューヨーク市副市長事務所が7月末に発表した報告書により明らかになった。

英語公用語宣言により、LEP人口へのサービスに関する英語以外の言語による文書の翻訳や通訳の提供に関する連邦政府の義務は廃止となり、クリントン大統領が2000年に制定したLEPのサービスアクセス改善を目的とした大統領令も撤回。移民支援者たちは、この決定により、LEPの人々が重要な公共サービスを受けることがさらに困難になると述べている。
ニューヨーク市では過去にも、緊急事態などでLEP市民が公共サービスを十分に受けられなかった例が発生している。2021年にハリケーン「アイダ」が襲来した際、洪水で13人が死亡。その多くは英語に不慣れなアジア系移民だった。州司法長官事務所によると、適切なタイミングで多言語の緊急警報が提供されなかったことが要因の一つとなった可能性がある。当時、連邦政府の緊急警報は英語とスペイン語のみで発令されていた。
新型コロナウイルス感染症のパンデミック中、市当局は重要な公衆衛生情報を配布したが、英語のみのケースが頻繁にあった。例えば、食糧支援団体シティー・ミールズ・オン・ホイールズは、複数の言語での資料を請求したにもかかわらず、ワクチン接種のチラシは英語のみだったと報告している。また、市教育局(DOE)は十分なバイリンガル職員を配置せず、適切な翻訳資料を提供しなかったため、英語学習者(ELL)の学習格差が拡大した。
報告書は市の言語支援システムの不備も指摘している。関連業務を外部の言語サービス業者に依存。数千万ドルにも上る税金が市外に流れていた。また、主に多言語を話す学生で構成する通訳・翻訳サービスも執行権限が曖昧で管理状況や質も正確に把握できていなかった。
最近の難民申請者や移民の波もシステムに負担をかけている。過去3年間で、市は20万人を超える移民を受け入れたがその多くは、市の主要10言語に含まれない言語を話す人たちだった。報告書では、言語アクセスに関する一元的な事務所の設置、通訳協同組合への資金援助の拡大、市全体のバイリンガル給与制度の導入など、市の政策とインフラの抜本的な改革を求めている。
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