米移民当局の不法移民摘発が激しさを増す中、不法(あるいは非正規)移民が州境を越える夏の旅行をする場合、州境で当局に職務質問される可能性があるとして移民の権利保護団体などが注意を呼びかけている。正規の滞在許可証を保持し、日本人を含む移民はパスポートやグリーンカードを必ず携帯し、職務質問には弁護士なしでは答えないようにするなどの警戒が必要だ。

ニューヨークに住むアレックス(仮名)さんはヒスパニック系で妻は白人だ。ニューメキシコ州に家族旅行を計画しているが、「書類の準備が大変だ」と話す。念のために就学前の2人の娘のパスポートを取得し、出生証明書や結婚証明書も持って行く。家族全員がアメリカ生まれであるにもかかわらず、娘たちの肌の色は浅黒い。「親としては最大の警戒が必要」と、不法(あるいは非正規)移民の厳しい取締りや誤認摘発に備えるという。
移民税関取締局(ICE)と税関・国境警備局(CBP)は人員を増強し、侵略的な不法移民摘発を続けている。空港では、グリーンカード保持者が祖国から戻ってきた際に身柄を拘束され、行方不明になっているケースさえある。
ICEやCBPが近づいてきたらどうしたらよいか。ニューヨークの移民コミュニティーに情報を発信するサイト「ドキュメンテド」によると、弁護士のアドバイスなしでは滞在ステータスについての質問に答えなくてもよい権利がある。パスポートなど正規の滞在許可証があれば、見せることはできる。また、持ち物の検査は拒否できる。
連邦政府の管轄である空港を使わず、バスや電車での移動はやや気楽だ。連邦職員は、令状なしにバスや電車に立ち入ることが禁止されているためだ。しかし、米自由人権協会(ACLU)は、国境から1600キロメートル以内では、ICEなどがグレイハウンドやアムトラックの抜き打ち捜査をしたケースを報告している。もしも当局がアムトラックなどに乗ってきたら、冷静な対応が必要だ。
メキシコやカナダに車で行く場合は、スピード違反などを起こさないように気をつけよう。警察の他にCBPが国境付近でパトロールをしているのは当たり前だからだ。
一方、ロサンゼルスのリトルトーキョーに14日、マスクをしたフル武装の移民取締官らが現れ、CBPが少なくとも1人を逮捕した。地元メディアによると、逮捕者が日系人かどうかは不明。しかし、現場となった国立全米日系人博物館近くの日系人文化センターでは日系の退役軍人を称えるイベントがあり、日系人が多く集まっていた。同時にカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(民主)が博物館内で記者会見を開いていた。「CBPが偶然来たのではない。記者会見の最中に取締官が来たのは、独裁的なトランプ大統領のアメリカだから起きた」と知事は非難した。
文・津山恵子
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