
17歳、高校シニアの長男が車通学を始めました。自宅から学校までの距離は20分です。大きくなったとはいえ、親にとってはまだ子どもなので、家に帰ってくるまで心配は尽きません。高校生なのに、もう運転?しかも学校に?自分が育ってきた環境からは考えられないことです。今月は外国人である私が、アメリカで暮らしていて感じる文化の違いについてお話したいと思います。

アメリカ人はスモールトークが上手?
学校や習い事に子どもを連れて行って(子どもを)待っているときや、パーティーなどで初対面の人と会うと、アメリカ人は気軽に声をかけてきます。にこやかに自己紹介をして、気さくに握手をしてくる人もいます。その流れでお互いに連絡先を交換したり、「ミキ、次は家族ぐるみで会おうね」「今度、子どもたちを一緒に遊ばせようね」といった話にもなります。誰だって仲良くなった気がしますよね。
でも、しばらくして偶然ばったり会うと、相手は知らんぷりをしたり、軽く挨拶するだけだったりして、前との態度の違いにびっくりすることがあります。「え?この前あんなに親しく話したのに、友だちになったと思ってたのに??」「も、もしかして、私、今、無視された?友達だと思っていたのは私の勘違いだった?それとも人種差別?」と、被害妄想がどんどんエスカレート(苦笑)。そして次にまた別の場所で会ったときは、以前のように親しげ気に話しかけてきたり(目が点)。「あ、これって、私、もて遊ばれてる?」と、被害妄想がまたもや膨らんで…きたりします(泣)。
感情的に振り回される…この経験、実は私だけじゃないようなのです。周りの人に話してみると、同じ経験をした人が多い。しかもアメリカ人でさえも!仕事場でも、学校でも、同じチームでプロジェクトに取り組んだのに、その後、偶然会っても完全スルーだと。

スモールトークは、社会の“潤滑油”
アメリカでは、スモールトークは「礼儀やマナー」として、とても大切にされています。天気や週末の予定、スポーツの話など、軽い会話を交わすことは、「相手を気遣っています」「あなたに敵意はありません」というサインでもあります。
つまり、スモールトークは「親しくなるための会話」ではなく、「お互いを不快にさせないための会話」、社会の“潤滑油”なのです。アメリカでは「その場限りのフレンドリーさ(situational friendliness)」が一般的。その瞬間や場面での明るい会話や笑顔は「親切のサイン」であって、「友達になった」という意味ではないのです。あくまでそれはその場の「マナー」であって、「そこでその場の関係が終わった」と考えている人が多いのです。アメリカでは「場ごとの関係」が主流で、「次に会っても別の文脈」と考える人が多いといわれています。「初対面のフレンドリーさ」も人間関係のスタート時点であって、信頼関係が続くかどうかは別の話なんですね。
面白いのは、そんなスモールトークを「マナー」として知っていても、初対面の人と話すのが得意ではないアメリカ人も少なくないということ。内向的な人も多く、見知らぬ人と何を話せばいいのか分からないという人はたくさんいます。

非アメリカ人がこの国に来て最初に感じるのは、「矛盾のように見える文化の違い」です。でも、「(マナーとしての)表面的な社交性」と「(個性としての)親密さ」を分けて考えると理解しやすくなるかもしれません。そうすれば、戸惑いや違和感も納得して受け入れられます。文化の違いは壁ではなく、「新しい視点を開いてくれる窓」なのかもしれません。
【今日のひとこと】
これまで3つの国で暮らしてきて、気付いたことがあります。どこに住んでも、大切なのは、
「頼む勇気」と「断る勇気」です。
頼むことは自分をより広い世界へと導き、断ることは自分を守る盾となります。
頼むときには心を開き、断るときには揺るぎのない心をもつことが大切です。
異なる文化や価値観の中で生活する今、この2つの勇気が人との関わりを支え、自分らしく生きるための鍵になっていると実感しています。
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