ちょっとした「やってみよう」が、人と人をつなげ、地域を支えているニューヨーク。ボランティア活動でのリアルな声や、心動く瞬間をNY de Volunteerがお届けします。
私たちNY de Volunteerは、社会課題の解決に向けて自ら考え行動する「チェンジメーカー」を育てることを目的に、2003年からニューヨークで活動している非営利団体です。
NY de Volunteerは、コニーアイランドを訪れた1人の日本人女性が、あまりに汚いビーチにショックを受け、「何かできることを」と、自らの手でごみ拾いを始めたことから始まりました。連載では、活動現場での人と人との触れ合いから生まれる、さまざまなエピソードをお届けしていきます。
連載第5回は、運営スタッフの声をお伝えします。
「やってみよう」が広げる世界~運営スタッフとしての私の一歩
こんにちは!NY de Volunteer運営スタッフのYumikoです。
これまでは、活動紹介やボランティア参加者の声をお届けしてきましたが、今回は少し趣向を変えて、私自身の運営スタッフとしての体験談をお話しさせてください。
ボランティア X 運営スタッフ─ダブルの「やりがい」
NY de Volunteer の運営は全て有志のボランティアによって支えられています。NY de Volunteer のボランティアプログラムに参加した人が、既存スタッフの姿勢に感化されて「自分も運営に関わってみたい」とスタッフを希望してくださるケースも多くあります。
私自身も、以前から NY de Volunteer の活動には関心があり、ボランティアプログラムの参加機会を探していましたが、残念ながら実際に参加する機会には恵まれませんでした。それでも、日本人が参加しやすいイベントを企画・運営しているという点は、異国で暮らす私にとって大きな安心感がありましたし、そうした前向きなコミュニティーの中に身を置くことで、駐在帯同生活の中でも自分なりの「やりがい」を見つけたいと思い、スタッフに応募しました。
前述のように、NY de Volunteer の運営スタッフも有志によるボランティアです。つまり、スタッフとして活動することは「二重のボランティア」をしていることになります。
1つは、ニューヨークでのボランティア活動に参加する一市民として、受益者と直接触れ合いながら社会貢献に取り組むこと。これまでの連載でもお伝えしてきたように、現地の社会に実際に関わり、自分の行動が誰かの助けになると実感できたとき、ここで暮らすことへの生きがいが生まれます。
もう1つは、運営スタッフとして、日本人が社会に参画するきっかけとなるようなボランティア機会を企画・提供すること。ニューヨークにはボランティア文化が根付いていますが、日本人にとっては言語の壁など、参加へのハードルを感じる場面もあるかもしれません。日本でボランティア経験のある人もいれば、この地に来て初めて「やってみよう」と思い立つ人も多いのではないでしょうか。そうした人々が安心して一歩を踏み出せる場を作ることも、社会に対する大きな役割になっていると感じています。
はじめの一歩に寄り添いたい
実は私も、来米前にボランティア経験はありませんでした。夫のアメリカ駐在に帯同するため、10年以上勤めた会社を退職。アメリカでの新しい生活に向けて「ボランティアでもやってみたら?」と周囲に言われることも多く、ネットでも情報があふれていました。駐在帯同となった途端に現れた「ボランティア」という選択肢。日本で暮らしていたときは考えもしなかったのに、仕事を辞めて時間ができたというだけで「やってみようかな」と思う自分に、果たして本当に社会に役立ちたいという気持ちがあるのかと、もやもやしていました。
それでも、何かやりたい―そんな私にとって、NY de Volunteer は「まず一歩を踏み出す」ことができる場所でした。当初のもやもやした気持ちは、スタッフとしての活動を通じて少しずつ「こういう形の社会貢献もあるんだ」とマインドが変化していきました。とにかく一歩踏み出すことで、車輪が回り始めるような感覚がありました。
同じように思い悩んだ人が参加してくれるようになったら、きっとその人の世界が広がり、人生がより豊かなものになるはずです。そしてその体験がまた別の誰かに伝わっていくことで、日本人がボランティアに参加する機会が少しずつ増えていく。そうした積み重ねが、社会をより良くする循環を生み出しているはずだと思っています。

運営スタッフの仕事って?
では、実際に運営スタッフがどんなことをしているのか、少しお話しましょう。週に1回のオンラインミーティングでは、次回の企画や振り返りします。ニューヨークのローカル団体と協働することもあり、カウンターパートとのやり取り、参加者の募集、当日の運営、活動報告の作成など、役割分担しながら進めています。
スタッフには、私のような駐在帯同の専業主婦もいれば、働きながら参加している人、学生もいます。限られた時間をうまく使いながら、協力して企画を形にしていくプロセスはとても刺激的です。対面でのミーティングもあり、オンラインでは話しきれないことを深掘りできる場にもなっています。こう書くと少し堅苦しく聞こえるかもしれませんが、スタッフ同士で会っておしゃべりできる時間は、純粋に楽しいひとときです。

チームで育つ、自分の可能性
私がこの活動で「ここが好き!」と思う点は3つあります。
1つ目は、継続的に取り組むコミット感。主体的に考え、動ける楽しさがあります。来米後、なかなか行動範囲を広げられず、自分の新たなコミュニティーを持てなかった期間を振り返ると、家事以外に「やるべきこと」がある、ありがたさを実感しています。
2つ目は、多様なバックグラウンドの仲間と協働する楽しさ。年齢も経験も異なるメンバーとの対話は学びの宝庫です。それぞれの考え方や振る舞い、得意としていることに刺激を受けることが多く、本当に勉強になります。オープンな雰囲気があり、ちょっとしたアイデアでも発言しやすいですし、いろいろな角度から意見をもらえるのも面白いところです。自分ひとりで閉じこもっていたら、きっと出会えなかった人たち、知ることのなかった学びが、この国での暮らしに豊かな彩りを添えてくれています。
3つ目は、自分次第でいろんなことができるということ。「こんなことやってみたい!」が歓迎される環境だからこそ、チャレンジがしやすい。正解がなく、みんなで作り上げる組織だからこそ、「これやってみたらいいかも!」の種は無限にあり、自分の積極性が経験を倍増させてくれます。
現在、NY de Volunteer で広報にチャレンジしていますが、前職は金融事務で広報とは全く異なる分野でした。企業特有の業務システムから離れた途端に、それまで培ってきたスキルが通用しないのではないかとの不安を感じたこともあります。そこで、場所を問わず活かせるスキルの一つとして広報に挑戦しているところです。
全くの未経験ではありますが、「まずは一歩踏み出してみよう」という気持ちがきっかけとなり、温かく見守ってくれるメンバーの支えの下、ウェブサイトの改善や団体紹介パンフレットの制作など、広報の可能性を広げていけたらと思っています。
“やってみよう”を育てる土壌
団体のミッションの中に「チェンジメーカー」という言葉があります。団体創立者の日野はよく「スタッフ自身がその姿を体現することが理想」と話します。自ら考え、行動する姿勢は、参加者や受益者にもポジティブな影響を与えるからです。NY de Volunteer の歴史の中で一貫して流れているのは、自ら手を挙げることや、その行動力をお互いに大事にする精神。年齢も背景も異なるメンバーが集まる中、役割分担も「できる人がやる」スタイルで、互いを尊重し合う文化が根付いています。こうした雰囲気があるからこそ、自分の役割を少しずつでも達成していこうと前向きに取り組むことができると感じています。そして、こうした土壌を絶やさぬよう、自分自身の言動をより前向きで心地良いものにしていこうと振り返るきっかけにもなっています。

一歩を踏み出せる場所を作っていけるように
「自分なんかで役に立つかな」という不安や謙遜から、一歩踏み出すことをためらってしまうのは、少しもったいない気がします。難しく考えなくても、さまざまなレベルや規模で、できることはたくさんあります。無意識のうちにできてしまう“壁”を取り払って、誰もが気軽に小さな一歩を踏み出せるような場所を作っていけたら─そんな思いで活動しています。
この記事を読んで、「仲間になってみたい」と思ってくださったら、とてもうれしいです。仲間が増えれば、もっと素敵なボランティアの機会を生み出せるかもしれません。いつか、どこかでお会いできることを楽しみにしています。
「スタッフになるほどの時間はなさそう…」という方も、自分らしい社会貢献のかたちを考えるきっかけになっていたらうれしいです。
木村祐美子(NY de Volunteer運営スタッフ)
NY de Volunteer
市民の社会参加やボランティア活動を推進し、グローバルリーダーの育成を通じて、社会課題の解決に向けて自発的に考え、行動する「チェンジメーカー」を社会に送り出すことを目的に、2003年から活動する非営利法人。公式SNSでは、ニューヨークでのボランティア活動の魅力や、イベント情報を配信中。フォロー&いいね!をお待ちしています。
instagram:https://www.instagram.com/nydevolunteer/
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