2025年12月1日 NEWS DAILY CONTENTS

「耳鳴り」と「睡眠」の密接な関係、オックスフォード大最新研究が示す可能性

耳鳴りの経験がない人には、その苦痛は想像するしかない。耳鳴りは自分だけに聞こえる主観的な音で、常に鳴り続ける場合もあれば、断続的に現れることもある。オックスフォード大学の神経科学者は、耳鳴りと睡眠が脳内で密接に関連している可能性を示唆している。科学関連ニュースサイト、サイエンスアラートが20日、伝えた。


写真はイメージ(photo: Unsplash / Jessica Flavia)

同大学の睡眠・概日リズム神経科学研究所のライナス・ミリンスキー博士は「耳鳴りは苦痛を伴う病態であり、睡眠は自然な生理現象だが、どちらも自発的な脳活動に依存している」と述べ、睡眠との共通性を探ることが耳鳴りの理解や新たな治療法につながる可能性があると指摘する。

耳鳴りは“幻覚知覚“の一種で、物理的には存在しない音を知覚する現象だ。本来、幻覚知覚は睡眠中にのみ生じることが多いが、世界人口の約15%は覚醒時にも耳鳴りを経験する。最も一般的な幻覚知覚であるにもかかわらず、その原因や治療法は依然として不明確だ。患者の多くが睡眠障害を併発しているにもかかわらず、両者の関連は最近まで注目されてこなかった。

ミリンスキー博士らは2022年、睡眠が耳鳴りに与える影響と逆の影響を初めてレビューし、深い眠り(ノンレム睡眠)で発生する大規模な自発的脳活動が耳鳴りを抑制する可能性を示した。人間と聴覚系が類似したフェレットを用いた2024年の実験では、強い耳鳴りを発症した個体が睡眠障害を示し、ノンレム睡眠に入ると過活動が抑えられることが確認された。これは、睡眠が同じ脳回路を介して耳鳴りを一時的に緩和する可能性を示す。

ミリンスキー博士は「耳鳴りは睡眠の質を悪化させ、逆に睡眠不足は耳鳴りを悪化させる悪循環を生む可能性がある」とし、ストレスが耳鳴りの悪化や発症の引き金になり得る点も指摘する。

この研究は、耳鳴りの新たな治療法開発だけでなく、睡眠という脳の重要な生理現象の理解にも貢献する可能性がある。

                       
合わせて読みたい記事
RELATED POST