2025年12月3日 NEWS DAILY CONTENTS

キース・ヘリング「FDR壁画」40年ぶりに公開中、NY・チャイナタウンのギャラリーで来年1月15日まで

夭折のアーティスト、キース・ヘリング(1958-1990)の「FDRドライブ壁画」がチャイナタウンのマートスギャラリーで公開中だ。ヘリングの最も重要な公共作品の一つとされるこの壁画は1984年、イーストリバーに面した高速道路沿いの約90メートルの区間で現地制作され、ほぼ1年にわたって公開された。長年、紛失・断片化・散逸したと考えられていたが、40年ぶりにオリジナルの30パネルのうち14点を展示している。

(11月22日、マートスギャラリー / photo: 本紙)

これまで個人のコレクションに収められていたFDRドライブ壁画は、踊る人物、放射状の輪郭線、吠える犬、翼のある身体、特大の電球が連なるパノラマ状の帯で、ヘリングによるグラフィック文字で輪郭が描かれている。ニューヨークの厳しい気候と排気ガスに晒された1年を経て、ニューヨーク的な独特の風化と傷痕を刻んでいる。

美術評論家でキュレーターのボブ・ニカスは解説文の中で、壁画は「社会的な掲示板であると同時に個人的な表現の爆発」で、ニューヨークが文化的緊張の瞬間を迎えていた時期に制作された作品だと書いている。

(11月22日、マートスギャラリー / photo: 本紙)

ヘリングが壁画を制作した1984年は、ロナルド・レーガン大統領が再選されエイズ危機が加速(レーガン政権はエイズを無視。対応が遅れたことで感染が拡大し、膨大な数の犠牲者が出た)、ヘリング自身もエイズと診断された。マッキントッシュ(アップル)のパーソナルコンピュータが初めて市場に登場した年でもあった。ニカスは続ける。「レーガンの勝利が後に多くの人々を葬り去ることになるとは、われわれは知らなかった。われわれの喪失の時代がまさに幕を開けようとしていたのだ。『アメリカを再び偉大にしよう』というスローガンに後押しされて (聞き覚えがあるだろうか?)」

エイズと診断されながらも、壁画は悲嘆に暮れてはいない。ヘリングの全作品と同様、希望に満ち、喜びにあふれ、生きている。壁画が解体(ヘリング自身の表現では「救出」)された数年後に、ヘリングはいくつかのパネルと再会。状態は悪いと認めつつも「なぜかそれがかえって良く見える」と語ったという。2026年1月15日まで。

(11月22日、マートスギャラリー / photo: 本紙)

KEITH HARING:FDR DRIVE MURAL,1984

期間                                          1/15/2026(木)まで  

会場
Martos Gallery (41 Elizabeth St.)

時間
火〜土 10:00-18:00                                           

入場料
無料

公式ウェブサイト                               https://www.martosgallery.com/           

インスタグラム                          https://www.instagram.com/martos_gallery/

                       
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