子どもには、できれば失敗してほしくない。親としてそう思うのは自然なことです。けれども、失敗をすべて避けさせることが、本当に子どものためになるとは限りません。大切なのは、失敗しないことではなく、「失敗しても大丈夫」と思える環境の中で、そこから立て直す力を身につけることです。今回は、子どもを安心して失敗させることと、親の関わり方について考えてみたいと思います。
先回りすると、学ぶ機会も減ってしまう
勉強でも受験でも、子どもが失敗すると、親はつい口を出したり、(過剰に)手伝いたくなったりするものです。宿題を忘れそうなら声をかける。テストで間違えたら、すぐに原因を確認する。勉強が思うように進んでいなければ、計画を立て直してあげる。もちろん、必要なサポートは大切です。
ただ、すべての失敗を大人が先回りして防いでしまうと、子ども自身が「失敗した後にどう立て直すか」を学ぶ機会まで減ってしまいます。
「やり直せる失敗」を安心して経験する
私は、子どもにはある程度、安心して失敗してほしいと思っています。ここでいう失敗とは、危険なことや取り返しのつかないことではありません。宿題を忘れる、テストで思うような点が取れない、勉強の計画が予定通りに進まない。こうした「やり直せる失敗」です。
失敗した時、子どもが「怒られる」「責められる」と感じると、次第に失敗そのものを隠すようになります。難しい問題に挑戦しなくなったり、分からないことを分からないと言えなくなったりすることもあります。
「なぜ?」に加えて、「次はどうする?」
だからこそ、失敗した時の親の言葉はとても大切です。
「なぜ間違えたの?」
原因を考えるためには必要な質問です。ただし、何度も聞いたり、強い口調になったりすると、子どもには詰問のように聞こえることがあります。
そこで、もう一つ加えてほしい質問があります。
「次に同じ間違いをしないためには、どうしたらいいと思う?」
この問いかけによって、子どもの意識は「失敗した過去」から「次にどうするか」へ移ります。それでも答えが出なければ、
「じゃあ、一緒に考えてみようか」
と寄り添えばよいのです。
ある保護者の方は、こんなことを話してくださいました。
「以前はテストで悪い点を取ると、私の方が焦ってしまって、『どうして間違えたの?』と何度も聞いていました。でも、『次はどうしたらいいと思う?』と聞くようになってから、少しずつ本人が自分で考えるようになりました」
失敗そのものが子どもを成長させるわけではありません。失敗した後に、自分で振り返り、次の行動を考える経験があって、初めて成長につながります。
小学生は一緒に、中学生は少しずつ自分で
そして、この時の親の関わり方は、年齢によって少し変えていく必要があります。
小学生のうちは、まだ自分だけで原因を整理したり、次の方法を考えたりすることが難しいものです。ですから、親が伴走して構いません。「どこで困った?」「じゃあ次はこうしてみようか」と一緒に考えながら、自分で立て直す方法を少しずつ教えていけばよいと思います。
一方、中学生になったら、目標は少しずつ「自走」に移していきたいところです。宿題の管理、勉強の計画、テストの振り返りまで親がすべて行うのではなく、まず本人に考えさせる。「次はどうする?」「自分ではどう思う?」と問いかけ、必要な時だけ手を貸す。その距離感が大切になります。
手を離すことと、放っておくことは違う
特に海外で生活するご家庭では、日本の受験や学習への不安から、保護者が子どもの勉強に深く関わることも少なくありません。子どものためを思えばこその行動ですが、先回りが続くと、「困ったら親が解決してくれる」という習慣にもつながります。
ただし、手を離すことと、放っておくことは違います。
困っていれば寄り添う。でも、すぐには答えを渡さない。少し待つ。考えさせる。必要なら一緒に整理する。そして最後は、本人にやらせる。
この繰り返しの中で、子どもは「失敗しても大丈夫」「次に直せばいい」と思えるようになります。
失敗しても、自分で立ち直れる子に
受験に限らず、これから先の人生には、思い通りにならないことが何度もあります。だからこそ、失敗しない子に育てるのではなく、失敗しても自分で立ち直れる子に育てることが大切なのだと思います。
「失敗させない」のではなく、「安心して失敗できる環境」に。寄り添いながらも先回りしすぎないことが、自分で伸びていく力につながります。
早稲田アカデミー ニューヨーク校
https://www.waseda-ac.co.jp/abroad/school/newyork.html
早稲田アカデミーNY校 川村宏一(かわむら こういち)

早稲田アカデミーUSA取締役・NY校現地代表。2002年に早稲田アカデミーに入社後、校舎で7年間にわたり講師を務め、その後、高校受験部門にて英語科目の責任者を担当。現在の早稲アカ英語科システムの礎を築いた後、国際部に異動し、英語専門校舎の統括責任者に就任。2023年3月から現職。早稲田アカデミーの教育理念である「本気でやる子を育てる」を、海外においても実践している。問い合わせは(メール:newyork@waseda-academy.com)まで。











