アメリカのマクドナルドで8月18日から期間限定で販売され、話題となっている「Hello Kitty & Friends x Godzilla Happy Meal」。サンリオの人気キャラクター全8種がゴジラシリーズの怪獣に扮したおもちゃを目当てに筆者も、約25年ぶりにハッピーミール(ハッピーセット)を購入した。
軽い気持ちで始めたはずが、店舗ごとに異なる在庫、SNSで飛び交う目撃情報、交換を申し出る友人たちに背中を押され、気がついたらニューヨーク中のマクドナルドを駆け回る“ハッピーミールハンター”に。大人をここまで夢中にさせる、その熱狂を追った。

コンプを目指す大人たちの戦い
何店舗目かのマクドナルド。基本的に電話をしても出ない。1軒1軒店舗へ足を運び、ハッピーミールの何番におもちゃが付いているのかを聞いて回る毎日。1店舗に1種類しかないこともざらで、全種類をコンプリートするのにこんなにも労力がかかるとは思ってもみなかった。そして、ここまでハマるとも思わなかった。

SNSでは発売前から大きな話題となり、コンプリートを目指す大人たちの声が相次いでいた。
発売日の店舗、まさかの在庫なし!?
「キティとけろっぴが欲しいな」。そのくらいの軽い気持ちで発売日の午前11時30分ごろ、近所のマクドナルドへ向かった。ハッピーミールを買うのは約25年ぶりだった。

ところが店員に聞くと、「サンリオのおもちゃはまだ取り扱っていない。前回のものしか在庫がない」とのこと。衝撃だった。発売初日に全種類を仕入れることこそ、マクドナルドを名乗る店の最大の責任ではないだろうか。ニューヨーク生活7年目にして、私はまたひとつカルチャーショックを受けた。
ショックも冷めやらぬまま、私の足は比較的大きな別店舗へ向かっていた。「サンリオのおもちゃ、ありますよ」。2店舗目の店員からそう聞いた私は、その場でハッピーミールを2つ注文した。「キティちゃんかな。マイメロかな」。マッチ箱と変わらないサイズのフライドポテトをよけ、1つ目のおもちゃを取り出す。「#2 けろけろけろっぴ」だった。

黄金をまとった荘厳なキングギドラの屈強な体に、けろっぴのとぼけた顔が3つ付いている。かわいすぎる。おもちゃのクオリティーもかなり高い。ハンバーガーとフライドポテト、カットリンゴ、ドリンク、さらにこのおもちゃが付いて約5ドル。コスパもいい。マクドナルドに感謝しながら、次の箱を開けた。
また、けろっぴだった。
目当てだったけろっぴを手に入れて上機嫌の私は、翌日も別のマクドナルドで昼食を取り、ハッピーミールを2つ注文した。まだ見ぬ小さき怪獣に胸を躍らせながら箱を開ける。ぐったりしたフライドポテトに紛れ、そこに横たわっていたのは、またしてもけろっぴだった。私は息を呑んだ。慌てて2箱目を開ける。

けろっぴだった。
約20ドルと引き換えに私の前に並んだ、4体・計12匹のけろっぴの顔を忌々しく眺めながら、この悔しさをインスタグラムのフォロワーへぶつけた。すると、日本とは異なり、ニューヨークでは全種類のおもちゃを一度に置いている店舗はほとんどないらしい、という情報が寄せられた。

つまり私は、「けろっぴしかいないマクドナルド」で、何も知らずにけろっぴを4体買っただけなのだ。しかし、ここでへこたれる私ではない。大きなヒントを得た私は、各店舗へ電話をすることにした。
でも、ここはアメリカ。さまざまな店舗へ電話をかけるがめったに出ない。もはや自分の足で店舗を訪れ、しらみつぶしに聞き込むしかない。ようやくたどり着いても既に売り切れている店もあった。
さすがはSNS時代、広がる“情報網”
汗をかきかき店舗を回る一方、SNSにはアメリカ生活の先輩たちから次々と情報が寄せられた。
「この店舗ではおもちゃを交換してくれる」「あの店舗には1〜4番がある」「この店舗ではおもちゃだけでも買える」「妹がキティちゃんを3つ集めた」「義母がマクドナルドで働いている」
インターネットが普及して久しい2026年にもかかわらず、真偽不明のさまざまな情報が、まるで口コミだけが頼りだった時代のように次々と集まってくる。そして、その情報の向こうには人がいた。
顔も知らないフォロワー、遠くに住む友人、そして私と血を分けた親族までが、ハッピーミールハンターと化した私を応援してくれている。いつしかこれは私一人の収集ではなくなっていた。その声を原動力に私は残暑の厳しいニューヨークを歩き続けた。
やっと手に入れたバッドばつ丸をけろっぴの隣に並べ、Googleマップに表示されたマンハッタン中のマクドナルドをにらみながら唸っていると、友人から連絡が入った。「けろっぴを交換してほしい人がいる」
私はけろっぴの入った箱を2つわし掴みにすると、待ち合わせのバーまでシティバイクを飛ばした。そうして私は、キティとシナモロールを手に入れた。

残りは半分。ここまで来たらもう引き返せない。「欲しかった2種類だけでいい」と言っていた発売初日の私はもうどこにもいなかった。周りの人たちの助けを借りながら、気づけば折り返し地点まで来ている。
ここまで来たなら、みんなでゴールしたい。いつの間にか私は本気でコンプリートを目指すハッピーミールハンターになっていた。
ハッピーセットを探すための専用サイト
そんなある日、汗まみれ泥まみれになりながら探す私の目に衝撃的な情報が飛び込んできた。「Happy Toy Scout」というWebサイトをご存じだろうか。
一見すると地図サイトのようだが、近くのマクドナルドと一般ユーザーから寄せられた「どのおもちゃが、何時間前にその店舗で確認されたか」という情報が表示される。

コメントでその存在を知った私は早速サイトを開き、まだ持っていないキャラクターを検索した。すると2ブロックしか離れていない場所にマイメロディがいる。しかも、確認されたのは1時間以内。
私は慌てて財布をつかみ、まだ雨の残る歩道を走った。上がる息を落ち着かせながら店員に聞く。「#3 マイメロディはありますか?」。すると店員は恐るべき言葉を口にした。
「ありません」
私は目の前が真っ暗になった。
荒らしがいる。
出会ってまだ数分。しかし、既に信じてやまなかった、かけがえのないWebサイト上に荒らしがいる。神聖なる情報交換の場に適当な情報を流すとは、なんと許されざる行いか。腹が煮えくり返るのを感じながらサイトが次に指し示す5ブロック先のマクドナルドへ向かった。
「テクノロジーに頼りすぎると、人間はダメになる」。昔のアルバイト先の店長の言葉が頭をよぎる。あの頃から人類は何も変わっていないのか。半ば諦めながら、カウンターで忙しそうに働くロングネイルの店員へ、その日5度目となる質問をした。
「#3、ありますか?」「ありますよ!」。彼女は目がくらむほどの白い歯を見せてくれた。

子ども時代の“あの感覚”かも
何がこんなにも私を夢中にさせるのだろう。どうやら私だけではない。ニューヨークのあちこちで大人たちが目当ての番号のおもちゃを探し、情報を交換し、コンプリートを目指している。
子どもだとか、34歳だとか。そんなことはどうでもいい。私たちはただ、欲しいものを見つけるために、街中のマクドナルドを駆け巡っている。それはゲームボーイで初代「ポケットモンスター」に夢中になっていた頃の感覚によく似ている。
「見つからない。だから、欲しい」「見つけた。だから、うれしい」

大人になれば、子どもの頃のように何かに夢中になることは少なくなると思っていた。けれどそんなことはなかった。あの頃と同じ熱と、ときめきが、2026年夏のニューヨークで確かに自分の中に蘇っている。
まだまだ続く旅、残すは…
現在、私が探しているのは「#5 クロミ」だ。多い時には1日に6店舗以上を回り、その有無を聞く。全くない。Webサイトに表示されていてもない。
これを書いている現在も、まだコンプリートには至っていない。マクドナルドを見つけるたびに番号を聞き、そして落胆する。もはや伝説のポケモンだ。

34歳にもなって連日揚げ物を食べたせいか、顔には吹き出物までできた。それでも今日もマクドナルドを見つけると足が止まる。「#5 クロミ、ありますか?」
コンプリートするのが先か。私の胃が悲鳴を上げるのが先か。ハッピーミールハンターの旅は、まだまだ続く。
文・写真/マサユキマツウラ
















