摩天楼クリニック「ただいま診察中」 アレルギー大全 【5回シリーズ その2】花粉症

花粉症

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ユン・シーン Eun Sheen, M.D.
梨花女子大学医学部卒業。ニュージャージー医科歯科大学でアレルギー免疫学フェローシップ修了。にきび治療、にきび、にきび痕の除去、アトピー性皮膚炎や食物・動物アレルギーの治療、化粧品や化学物質によるかぶれや腫れなどの治療が専門。
Holy Name Medical Center
718 Teaneck Rd, Teaneck, NJ
Tel: 201-833-3000 www.holyname.org

 前回は、ニューヨークを拠点に30年間アレルギー患者の治療に当たっているユン・シーン先生からアレルギー反応の基本的な仕組みを教わった。今回は、数あるアレルギーの原因アレルゲン(抗原)の中からまず、今の季節一番気になる花粉(pollen)について詳しく聞いてみよう。

飛散のピークは2〜5月
「日本では近年、スギ花粉症が増加していますが、ニューヨークでは、オーク、カバノキ、カエデなど地元の樹木の花粉がアレルゲンになります。例年は2月に飛散し始めて5月初旬まで続きます。花粉は風に乗って広範囲に飛ぶので注意してください」とシーン先生。そういえば、元ヤンキースの松井秀喜さんも毎年、花粉症のせいで開幕直後の2カ月は集中力が落ち、打率が伸び悩んでいた。
 先生は続ける。「今年は暖冬だったので花粉シーズンのスタートは早かったですが、4〜5月は気温が冷え込む日が多く、飛散がいったん止まり、そのせいで溜まった花粉が最近になって一気に吹き出している状態です」。
 ちなみに、草本植物(茎と葉を持つ植物で、実がなった後は地上部が枯死する植物)も花粉を出す。シーズンはやや遅く晩春に始まり7月まで続く。特に米中西部と東海岸の農村地帯ではブタクサ花粉が多く、盛夏から9月まで飛散する。「肉眼で見えないほど小さな花粉なので、風に乗って400マイル(約640メートル)も飛散するといわれています。ニューヨークでも西風が運んでくるブタクサ花粉の存在は要注意です」と先生は言う。

風邪と花粉症の相違点
 花粉症は目や鼻の粘膜に起きるアレルギー反応で、「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」「目のかゆみ」などの症状を引き起こす。風邪とよく似ているが、熱や悪寒、喉の痛みなどを併発したら、風邪。鼻水に粘性や濃性があったらやはり風邪の可能性がある。しかし、毎年同じ時期に症状が出て、しかも1週間以上続いたら、花粉症を疑った方がいい。
 植物と共存する限り避けては通れない花粉症だが、予防の手立てはあるのだろうか?
「とにかく飛散している花粉に触れないことです。花粉は乾燥して風の強い日に多く飛ぶため、なるべく外出は避けましょう。pollen.comやテレビの天気予報、アレルギー薬のウェブサイトなどで毎日、正確な花粉情報が出るので必ずチェックしてください」。その他、花粉症対策として、先生は次の9項目を推奨する。
(次週に続く)

花粉症9つの対策 花粉症はこれで緩和できる!
❶花粉の多い日は、外から帰宅したらすぐに衣服を脱いでシャワーを浴びる
❷花粉の季節はドアや窓をしっかり締めて部屋を密閉する
❸屋内や車内ではエアコンをかける
❹午前中はなるべく屋外での作業を控える
❺屋外に長時間滞在する場合は、花粉よけマスクを付ける
❻イヌやネコなど花粉を持ち込みやすいペットの体を小まめに拭く
❼コンタクトレンズは花粉が付着しやすいので、花粉の季節には眼鏡に替える
❽花粉が多い日の外出時は、サングラスをかける
❾外出前と帰宅後は生理食塩水で鼻腔を洗浄する