弁護士スティーブン・エプステインの知ってて安心! 法律指南 Vol. 39 ◆司法妨害と弾劾

 最近のニュースといえば、トランプ大統領の話題一色。トランプ大統領陣営がロシア情報当局と結託していたという疑惑で物議を醸しています。これらの疑惑は、大統領または内閣官僚らが「司法妨害」に関与しているかどうかについて疑問視されています。

一部の政治家や報道機関は、事実が判明した場合、大統領を「弾劾」するという劇的な措置についても議論しています。
 司法妨害とは、「不正にまたは暴行、脅迫などを用いて司法の適正な運営に影響を与え、もしくはこれを妨げる、またはそれらを試みる者」 と連邦法に記されています。証拠を隠滅したり、捜査や捜査官の職務執行を妨害したり、司法手続を妨害するなど、公的手続を妨害することを指します。
 司法妨害で有罪判決が下されるには、司法手続きの妨害を試みるだけでなく、①その時点で未判決の訴訟手続きが行なわれると知っていた②司法妨害を試みる者と未判決の訴訟手続きに関連性があった、といった理由が必要になります。
 弾劾については、米国の憲法に「大統領、裁判官、またはその他の連邦政府職員は、反逆罪、収賄罪、その他の重大な罪または軽罪につき弾劾の追訴を受け、有罪の判決を受けた際は、その職を解かれる」と記されています。それは各閣僚から大統領、連邦最高裁判所の連邦裁判官、米国最高裁判所の最高裁判官らに至るまで、彼らの汚職を裁く法律となっています。犯罪性、不正行為、または権力の乱用など、確かな証拠によってのみ訴追されますが、政治目的のために使用されることもあります。
 大統領、裁判官、またはその他の連邦政府職員を弾劾するためには、下院の出席議員過半数の同意により訴追を行ない、上院がそれに基づき弾劾裁判を行ないます。そして、3分の2以上の上院議員の有罪判決の同意を得なければなりません。上院によって有罪判決を受けた場合、罷免されます (ビル・クリントン大統領は下院によって弾劾裁判が行なわれましたが、彼は上院では有罪にならず、その後も大統領として就任し続けました)。
 トランプ大統領は、米国州の弁護士や地方の弁護士によって刑事告発を免れると一般的にみなされています。したがって、トランプ大統領を支持するかどうかにかかわらず、彼がすぐに大統領職を離れることはまずないと言えるでしょう。

 
 

Steven

Steven W. Epstein スティーブン・エプステイン弁護士
ブランディーズ大学、ニューヨーク・ロースクール卒。18歳から法律事務所で働き始め、2003年まで弁護士組合員として幅広い分野の訴訟を担当。04年に独立し、「Steven W. Epstein & Assosiates法律事務所」を設立した。取扱い業務は、民事訴訟、会社法(設立、契約)、家庭法(離婚)、刑事訴訟など、多岐に渡る。また、NY市行政裁判所にて非常勤審判官も務めている。

 
 

Steven W. Epstein & Assosiates法律事務所
【住所】 マンハッタン:1178 Broadway, #316(on the corner of 28th St)
スタテンアイランド:361 Victory Blvd, SI
【電話】 212-729-9164(日本語)/212-422-2110(英語)
【Eメール】epsteinlaw@yahoo.com