新連載② 山田順のメールマガジン「週刊:未来地図」 北朝鮮を攻撃しないで崩壊させる方法(中)

北朝鮮を崩壊させねばならない4つの理由

 ここで、日本のリベラルおよび左派が理解できない、あるいは理解しようとしない、「話し合い解決」はなぜあり得ないのかをまとめておこう。この前提は、話し合いでは彼らが核を放棄しないことにある。すでにトランプは完全にこのことを自覚した。
 バカでも分かるが、国民を飢えさせ、餓死者まで出して開発したミサイルと核を放棄するわけがない。となると、彼らの核を容認すると次のような事態に世界(とりわけ日本)は陥る。

(1)アメリカの同盟国に対する「核の傘」が消滅する
 北朝鮮とアメリカで相互確証破壊が成立すると、アメリカは北を攻撃できなくなるので、日本や韓国は丸裸になる。なぜなら、アメリカ国民は「なぜ私たちが攻撃されるリスクを冒してまで日本、韓国を助けなければならいのか?」となるからだ。これは、アメリカの世界覇権の大きな低下を招き、同盟国は大混乱することになる。

(2)国際的な核兵器の管理体制「核拡散防止条約(NPT)」が崩壊する
 現在の国際社会は、アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランスの5カ国を公式の核兵器保有国として認め、ほかの国の核武装は阻むというシステムで成り立っている。NPTに不参加のインド、パキスタン、イスラエルの核は事実上容認されているが、このうえ、北朝鮮まで容認するとなると歯止めがなくなり、この先、どんな国が核開発をしようと阻止することはできなくなる。

(3)北朝鮮の核兵器が他の無法国家やテロ組織に拡散する危険性が高まる
 もし、北が反米国家、無法国家、テロリストに核やミサイルを売ったらどうなるだろうか? (2)によって、アメリカは容認せざるを得ないのだから、世界の危機はより強くなる。

(4)北が威嚇と武力により、韓半島を統一しようとする機運が高まり、誰もそれを阻止できなくなる
 北朝鮮はそもそも韓国を正当な国家と認めていない。したがって、米韓同盟を崩し、アメリカ軍を朝鮮半島や東アジアから駆逐することを国家使命としている。金正恩はこれに向かって進むだろう。
 もし、これが実現すれば、韓半島は日本を敵視する核を持つ「統一朝鮮」となり、日本の安全は限りなく脅かされる。このバックに中国、ロシアがいるのだから、日本は危機的な状況に追い込まれる。
 つまり、東アジアの現在の秩序は崩壊し、日本はアメリカから中華秩序に乗り換えざるを得ないかもしれない。
 このような状況を想定して、韓国と日本に核を持ち込むこと、さらに核武装を容認させることまで、いま、アメリカでは広範囲にわたって検討されている。

海上封鎖をして徹底的な兵糧攻めを実施

 というわけで、トランプ政権は「力による解決」を図っていくわけだが、まずは、「海上封鎖」を実施するだろう。
 先日の国連の制裁決議により、北はじわじわと経済的に追い詰められていく。ただ、中国とロシア次第では抜け道が山とあるので、最終的にトランプは朝鮮半島の両岸を取り囲む海上封鎖を行うはずだ。
 いきなりの先制攻撃、斬首作戦はリスクが大きすぎるが、これは極めて合理的な作戦だ。「孫子の兵法」でも、この策が最上とされている。すなわち、「味方が10倍であれば敵を包囲する」「敵国を傷つけず降伏させるのが上策」(謀攻篇)で、戦争をせずに勝つことが最大の勝利である。
 アメリカ軍は、この「孫子の兵法」もテキストとして取り入れているので、このような軍事行動をまず起こしてくると思われる。
 つまり、これは完全なる「兵糧責め」で、これも戦争の一環である。ともかく、キムにもはやこれまでと思わせるまで、完全包囲をするのだ。少なくとも3つの空母打撃群と日本の自衛隊および韓国海軍の艦船で海上封鎖と包囲を行い、上空にはB2B爆撃機、F35戦闘機などが常時待機飛行している体制をつくる。そうして、いつでも、通常兵器で最大の破壊力を持つというMOAB(大規模風爆弾)も使うと脅すのである。(つづく)

 
 

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【山田順 】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。

この続きは、10月11日発行の本紙(アプリとウェブサイト)に掲載します。 ※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。