ビールからパンに変身 スーパーフラワー、食品廃棄物削減への一歩

 【25日付ニューヨークタイムズ】ビール造りの工程で出た麦芽のかすは、飼料や堆肥、燃料としても再利用されるが、多くは廃棄される。しかし、ブルックリン区に住むベルサ・ジメネスさん(35)は「食べ物」として再利用することに注目した。
ジメネスさんの会社、ライズプロダクツではこうした麦芽のかすを粉末にし、小麦粉に代わる材料としてニューヨーク州内のベーカリーやレストランに卸している。エクアドル移民のジメネスさんは2015年、ニューヨーク大学タンドン・スクール・オブ・エンジニアリングの博士号課程で食品廃棄物の削減について研究していたとき、近年製造が盛んなクラフトビールに目が止まり、麦芽のかすに狙いを定めた。
大学同期生のアシュウィン・ゴピさん、ジェシカ・アギレアさんと共同で同社を設立。20以上の醸造所を調査した。グリーンポイント・ビール・アンド・エール・カンパニーのジェフ・リオンズさんに話を持ちかけたところ、容器3つ分の麦芽のかすを提供された。「まだ栄養はたっぷりある」とリオンズさん。再利用する計画に二つ返事で快諾した。
3人はおかゆのように煮込んだ液体状のかすを使ってパンやクッキーを作るなど試作を重ねた。初めはベーカリーなどに持ち込んでもあまり興味を持たれなかったが、同区のレストランベーカリー、ランナー・アンド・ストーンのオーナー、ピーター・エンドリスさんが、粉末にしてはどうかと提案。こうして生まれたのが、「スーパーフラワー」だ。
エンドリスさんの店では小麦粉とスーパーフラワーを半分ずつ混ぜたショートブレッドクッキーなどを販売し、同区の別のベーカリー、ビアンキュイもまた、スーパーフラワーを使ったパウンドケーキなどを販売。同区のパスタ製造会社、スフォグリーニはライ麦粉と混ぜてラディアトーリを作るなど、少しずつ需要が増えている。また、食品廃棄物削減に賛同し、スーパーフラワーを取り入れたいと申し出る飲食店も増えている。ケロッグやネスレなど食品大手からも問い合わせがあるといい、評判は上々だ。
製造はクイーンズ区ロングアイランドシティの厨房で行っている。麦芽かすをオーブンで乾かした後、石臼で挽いて粉末にする。全て手作業のため、1パウンド(約450グラム)当たり卸し売りで8ドル、小売は16ドルと少々値が張るが、ビジネスが軌道に乗ったら値下げする予定だという。
2017年、ジメネスさんはイタリアのミシュラン三つ星レストラン、オステリアフランチェスカーナのオーナーシェフ、マッシモ・ボットゥーラさんに連絡し、サンプルを発送。その後、15パウンドの注文が入ったという。近い将来、同レストランでスーパーフラワーを使った料理が提供されるかもしれない。

スーパーフラワーを使ったビアンキュイのパン。酸味とともに「ビール」の風味が口の中に広がる(photo: 本紙)

スーパーフラワーを使ったビアンキュイのパン。酸味とともに「ビール」の風味が口の中に広がる(photo: 本紙)