フリーランスのフィジカルセラピスト(理学療法士)として長い経験を持つ原島とし子さん。1980年代から90年代初めにニューヨーク市でエイズが大流行したときは、エイズ患者を、その後は未熟児や発達障害の子どもたちを中心に治療をしてきました。ここ10年は鍼灸師としても活動。多忙な毎日でしたが、考えるところあって今年から仕事を徐々に減らし愛犬のルーク中心の生活に。大雨でも雪嵐でも毎朝6時に起きてプロスペクトパークへお散歩。1日3回の散歩を欠かしたことはないそうです。

原島とし子さん:フィジカルセラピスト、鍼灸師。ブルックリン区在住、ニューヨーク在住42年
—ルークとの出会いは?
その前に飼っていたトイプードルのポチが死んで5年後に、また犬と暮らしてもいいかな、と思って行ったシェルター主催のイベントで出会いました。ピットブルとジャックラッセル、ビーグルが混ざったという愛嬌たっぷりの顔と短足に惹かれて。「じゃあ、試しに散歩をしてみよう」ってことになって、一緒に歩いてみたらとっても静かで行儀がいい。私がベンチに座ったら、隣にちょこんと座る。何だか離れがたくなって引き取ることに決めました。ルークはまだ1歳だったかな。
—シェルター犬ということは、捨てられたのでしょうか?
引き取る際にもらった記録を自宅に帰ってからよく読んでみると、「ブルックリンの市営住宅で飼われていた。吠えてばかりいるから、管理事務所から「処分」を言い渡され、飼い主が市営のキルシェルター(編集部註:一定の期間内に引き取り手がない場合は、殺処分にする施設)に持ち込んだ」と書いてありました。

ルーク:11歳、雄、雑種
—吠えましたか?
はい。犬は吠えるものですが、度を越して吠えるのは困ります。アパート暮らしですし。でも、ルークが吠えたのには理由があったんですね。構ってもらうことがほとんどなかったんだと思う。肉球もふわふわだったから、散歩にも連れて行ってもらってなかっただろうし。ご飯もちゃんと食べさせてもらってなかったようで、(引き取ったときは)ガリガリに痩せていました。
—新しい環境にうまく適応できましたか?
いえいえ。セパレーションアングザエティー(分離不安症)を起こして大変でした。私が外出しようとしてアパートの鍵を持つと、そわそわして離れない。振り切ってドアを閉めると吠え続ける。心配のあまりドアの前から離れられず、吠え止むまで外で様子をうかがう、といった日々が続きました。対策本を読んだりドッグトレーナーに相談したりと、本当に大変でした。「この人はボクを捨てない」って信頼してくれるまで1年かかりましたね。
—ルークと暮らすようになって変わったことはありますか?
毎日散歩に行くことで体力がついたように感じます。更年期を過ぎたころに少し太ったのですが、ルークと歩くようになって、若いときと同じ体重に戻りました。
—原島さんとルークの関係を一言で表すなら?
全てがルーク優先だから、ルークがボスで私が家来かな。(散歩中は)あちこちでしつこく嗅いでやたらと時間がかかるし、拾い食いもするし、「憎ったらしい〜」って感じる瞬間がありますけどね(笑)。
【 教えて!シンゴ先生 】
アニマルシェルター/動物病院のヒューメインソサエティー・オブ・ニューヨークで獣医師として活躍する添田晋吾先生にペットの健康について聞きました。

添田晋吾
1995年山口大学農学部獣医学科卒業。2000年に来米し07年に米国獣医師免許を取得。ヒューメインソサエティー・オブ・ニューヨークに勤務する傍ら、東洋と西洋の医学を併用し、老犬のペインコントロールやQOLの向上を目的とした獣医療にも取り組む。
Q 動物病院が行う検査について教えてください
A 動物病院では血液や尿の検査は通常のチェックアップ時、もしくは病気が疑われる場合に行います。検体は(病院外の)ラボ(検査所)へ出すことが多いようです。特定の病気や慢性疾患の進行状況を定期的に監視したい場合も、ラボに出せば多くの項目をチェックできます。画像診断としてはレントゲンや超音波があります。レントゲンは影絵のようなもので、臓器や骨の形や大きさ、硬いもの(固体)、空気や水を明瞭に写し出します。胃や腸の中の異物や、尿路結石や肺の状態を判断するのはレントゲンです。レントゲンを風景写真とするならば、超音波は接写写真のようなものです。例えば血液検査やレントゲンで肝臓に異常を発見したら、超音波装置で臓器の中をピンポイントで画像診断します。また、超音波を使えば、心臓の弁膜や血流などを計測でき、心臓病を発見するだけでなく進行状況も把握できます。心臓病の治療方針を立てる際に、超音波検査は欠かせません。この他にも細菌の培養検査、細胞診、そして組織の生検など診断を絞り、治療へ導く検査をします。またCTスキャン(コンピューター断層写真)やMRI(核磁気共鳴画像法)などの画像診断の他、皮膚科、眼科、腫瘍科ではそれぞれの専門の検査があります。「動物病院ではさまざまな検査を提案されるけど、果たして必要なの?」と感じる飼い主が多いと聞きます。そんなときは、なぜ検査が必要なのか、治療にどう役立てられるのかを主治医とよく話し合ってから決めることをお勧めします。
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