連載212 山田順の「週刊:未来地図」歴史を歪める利権まみれの「アイヌ新法」 (下) アイヌ民族は本当に先住民なのか?

ポロトコタンのアイヌ民族博物館を訪問

 現在、北海道観光の主要スポットの1つ、白老町にある「アイヌ民族博物館」は休館中で、工事中である。ここは、「ポロトコタン」(アイヌ語で「大きな湖の集落」の意味)と呼ばれ、湖畔にある野外博物館だが、大幅に改修されて、来年、「民族共生象徴公園」としてオープン(2020年4月24日予定)することになっている。
 博物館は文化庁の管轄だが、このほか、国立の民族共生公園(国交省の管轄)、民族共生象徴空間(内閣官房の管轄)などが設置される大事業で、税金がふんだんに使われる。
 これもまた、「アイヌ新法」によるアイヌ文化の振興策の1つである。
 私はこのポロトコタンに、かつて家内と娘とともに行ったことがある。もう20年近く前のことだ。
 湖畔の一角に、「アイヌコタン」(アイヌの大集落)がそっくり復元されていて、畝屋根を持つアイヌの家のなかに入れば、昔のアイヌの人々の生活ぶりがわかるようになっている。また、集落の広場では、観光客向けに「イヨマンテ」(クマの霊を送る踊り)が披露されていた。
 その夏、娘はまだ小学1、2年生で、初めて見るアイヌの人々の衣装や踊りに目を丸くしていた。また、イヨマンテの踊りに喜び、野外にあるクマの像を見てびっくりしていた。
 その記憶があったのだろう、高校生になったとき、娘は日本史の授業で出された休み中のレポートのテーマに、「アイヌ民族の歴史」を選んだ。歴史の教師(アメリカ人)が勧めたこともあり、娘は東京駅の八重洲口近くにある「アイヌ文化交流センター」に出かけた。
 東京の地理がよくわからないというので、私が連れていった。
 センターには、アイヌに関するパンフやDVD資料がそろっていて、文献も豊富にあった。どれもこれもみな、アイヌがいかに虐げられ、差別されてきたかを述べていたと思う。娘は、そのような文脈でアイヌ民族に関するレポートを書き、教師から「A」をもらった。

アイヌ団体の訴えをまともに受け取る外国人記者

 外国人、とくにアメリカ人のリベラルな人々は、日本にも、先住民を弾圧した歴史があると知ると喜ぶ。喜ぶと言うと語弊があるが、自分たちがしてきたことへの贖罪の意識が、少しでも薄れると思って安堵するようだ。
 人間はみな同じなのだとーー。
娘の歴史の教師もイエール大学を出たリベラルだったので、その傾向が強かった。歴史とは為政者、権力者の話ではなく、貧しい大衆の話だと信じていた。
 こうした傾向は、日本にやってくる外国メディアの記者たちにも顕著だ。とくに英米メディアの記者たちは、日本の歴史に詳しくないので、この国にある人権問題、差別問題を記事にしたがる。
 その点で、アイヌ民族は彼らにとって格好の材料だ。
 3月1日、アイヌの市民団体「アイヌ政策検討市民会議」が「アイヌ新法」に関して日本外国特派員協会で記者会見をし、「アイヌが持つ権利が明記されていない」などとして法案を取り下げるよう訴えた。外国特派員協会の記者会見は、協会から要請するものが多く、外国特派員たちは、このようなテーマが本当に好きだ。
 なぜなら、その裏になにがあるか、ほとんど知らないし、知ろうともしないからだ。
 まともに聞けば、今回「アイヌ政策検討市民会議」の主張は、リベラルの文脈から見て正しいものだった。彼らは、「(新法には)地域にもともと住んでいたアイヌが持つ『生活する権利』などに関する条文がなに1つ、見当たらない」「生活支援などが盛り込まれていない」と訴え、政府に最終的に法案を取り下げるよう、訴えたのだ。
 しかし、そんな条文を入れたらどうなるだろうか?その答えは書くまでもないだろう。
 アイヌ協会を中心にアイヌの団体がいま行っていることは、本当のアイヌの系譜を持つ人々の誇りを奪い、彼らを「弱者救済」を理由に、補助金漬けにすることにほかならない。悪く言えば、同胞を食い物にしているのだ。
 この真実を多くのメディアが伝えない。伝えれば、抗議行動を起こされるからだ。本当に、最近のマスメディアは情けないとしか言いようがない。
(了)


【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。

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