連載336 山田順の「週刊:未来地図」止まらない「コロナ禍」への数々の疑問。 これまでの情報を整理する(第一部・上)

 今回から3回に分け、新型コロナウイルス(COVIT-19)の感染拡大問題に関して、私が抱いてきた数々の疑問点を述べていく。これまでに得られた各種の情報を整理しながら、「コロナ禍」が今後どうなるのかを考える。
 もはや「歴史的な人類の危機」「まさに戦争と同じ」という状態だが、はたして、なぜこんなことになったのか?振り返ってみると、じつはよくわからない。このウイルスが厄介で怖いことは確かだが、世界がここまで危機に陥ってしまうとは、当初は想像もつかなかった。はたして、危機はいつまで続くのだろうか?

(1)感染者数、死亡者数を比較するのは無意味
 現在メディアは、世界各国の感染者数、死亡者数を比較して報道することを繰り返し行なっている。たとえば、「アメリカの感染者数は60万人超え、世界一を続けています」「日本の感染者数はまだ1万人に達していません。世界的に見て少ないほうです」などと。
 しかし、こうした報道には疑問がある。疑問というか、それをそのまま鵜呑みにすると、認識を間違える。なぜなら、現在、世界の多くのメディアが使っている「コロナ感染者統計」は、ジョンズホプキンズ大学のシステム科学・工学センター(CSSE)が集計したもので、その元は、世界各国の政府や公共機関が発表した数字だからだ。
 新型コロナウイルス(COVIT-19)の検査方法は、PCR検査が主流だが、各国によって、検査方法も検査数も違う。それなのに、これを一列に並べてランキングすることは、報道のための報道であって、各国の実態を表していない。もうさんざん指摘され続けてきたことだが、日本の場合、人口当たりの検査数があまりに少ない。そのため、国ごとの比較対象から除外している海外メディアもある。
 また、一口に「感染者数」といっても、それは検査して「確認された感染者」(confirmed cases)にすぎない。中南米、中東、アフリカなどの途上国に「確認されていない感染者」が数多くいて、静かなパンデミックになっている国がいっぱいあると思われる。

(2)イタリアの死亡者数、死亡率への疑問
  日本は、感染者数、死亡者数とも少ない。それに比べると、つい先日までのイタリアの感染爆発はすごかった。しかし、感染者数、死亡者数、死亡率とも、日本とは逆の意味で私はイタリアに疑問を抱いてきた。
 それは、なんでもかんでもコロナのせいにして処理しているのではないかいうことだ。
 とくに死亡者数、死亡率は、水増しされていると考えるべきだと思う。それは、感染爆発で医療崩壊してしまったために、死んでしまった高齢者をみなコロナ感染死でカウントしてしまったとしか思えないからだ。
 実際、死亡者の半数は、事前に3種類以上の疾患を抱えており、4分の1は1、2種類の疾患を抱えていたという。また、死亡者の平均年齢は約80歳である。
 これが、死亡率10%以上という異常な結果をもたらし、中国、韓国などの2%前後をはるかに上回っているのだ。
 つまり、乱暴な言い方になるが、これら高齢死者はコロナがなくともすぐに死ぬ人々であり、コロナがその引き金を引いた。あるいは、コロナではないのにコロナ死にカウントされたと考えていいはずだ。
 こうしたことはイタリアばかりか、ほかの国でも起こっていると思われる。

(3)医療崩壊が切迫? いや、もう崩壊している!
 「医療崩壊が迫っています」と、メディアは連日言っているが、私は、すでに崩壊していると思っている。したがって、感染したら、持病を持つ高齢者は死を覚悟するほかない。
 医療崩壊を決定づけるのは、感染・発症しても医療が受けられずに死んでしまう「在宅死」の発生と、院内感染による病院の機能停止である。さらに、医療リソース(マスク、防護服、人工呼吸器など)の欠乏だ。
 在宅死の場合、ニューヨークを例にあげると、1日に200〜300人規模で発生している。このうちのほとんどが新型コロナの感染者であるとされる。検査で陽性とされてもベッド数が足りずに入院できないため、自宅隔離となるが、それで容態が急変して死にいたったというケースが多いのだ。
 すでに同じ例が、日本でも発生した。
 清水建設社員の在宅死である。この50歳代の男性社員は、4月3日に発熱があり、7日から自宅待機となっていた。PCR検査を受けたが、容体が急変して死亡。死亡後の13日になって陽性が判明したという。
 また、院内感染は、毎日のように全国で発生している。東京では、台東区の永寿総合病院で最大規模のクラスターが発生し、その後、中野区の中野江古田病院などで次々に起こった。こうなると、医師や看護師が勤務できなくなり、コロナに限らずあらゆる患者を診られなくなるので、医療は完全に崩壊する。
 同じく、マスク、防護服、人工呼吸器などの医療リソースの欠乏も深刻だ。大阪では、松井市長がとうとう「(防護服の代用のため)カッパを送ってほい」と言い出した。
 今後は、新型コロナに感染・発症しても、診てくれる医療機関がなくなると思って、覚悟しておいたほうがいい。(続く)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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