連載339 山田順の「週刊:未来地図」止まらない「コロナ禍」への数々の疑問。これまでの情報を整理する(第二部・上)

 前回に続いて、「コロナ禍」の情報を整理して配信している。今回は、今日までの報道で、私が注目したトピックについて述べていく。
 もし、今回の「コロナ禍」がかつての「スペイン風邪」と同じような「100年に1度」のことなら、私たちは、今後3年にわたって、耐える生活を送る必要があります。

(9)オーストリアのサンプル検査でわかること
 これまで私は、はたして日本にどれくらいの数の感染者がいるのか? 本当のところはどうなのか? と考えてきた。
  それを知るためのニュースが、オーストリアから飛び込んできたので、紹介したい。オーストリア政府は、サンプル検査を行ったのだ。
 4月1日から6日にかけて、オーストリア政府は、国内の新型コロナウイルス(COVIT-19)の感染者を推定するために、無作為に選んだ1500人余りにPCR検査を行った。その結果、全体のおよそ0.3%が陽性となった。
 そのため、オーストリア政府は、実際の感染者数は、これまで確認してきた感染者数の2倍以上に上るとみられると発表した。オーストリアの確認感染者数は約1万2200人だったので、2万5000人以上ということになる。ただ、推計の最大値は6万7400人とした。
 オーストリアの人口は約890万人。そのため、政府はもっとも可能性が高い数字として、最終的に約2万8500人を感染者の実数ではないかと公表した。
 では、この結果を日本に当てはめるとどうなるだろうか? 
 もし、日本も感染率がオーストリアと同様の0.3%とすれば、約37万人が感染していることになる。これは、イタリア、スペインの現在の確認感染者数16〜17万人の2倍強、アメリカの約60万人の半分ほどに相当する。イタリア、スペインの人口は日本の半分ほど、アメリカの人口は日本の約2.5倍だから、計算上は妥当な数字だ。
 それにしても約37万人である。これは、現在の日本の確認感染者数の約45倍にあたる。今後、検査数が増えれば、感染者数はこの数字に近づいていくのだろうか。

(10)なぜアイスランドは感染拡大を防げたのか
 感染拡大防止に成功した国として、アジアの台湾やシンガポールなどとともに、北欧の島国アイスランドが挙げられている。なぜ、アイスランドは感染拡大を防げたのだろうか?
 アイスランドの人口は約36万人。
 アイスランド政府は、3月末までに、その人口の5%ほどの約1万7900人に検査を実施した。そのうちの半数は、高リスク患者を中心にとして国立大学病院が、残りの半数は保健当局の委託を受けたバイオ医薬品会社、デコード・ジェネティクスが行った。デコード・ジェネティクスは米バイオ医薬品会社アムジェンの子会社である。
 同社のカリ・ステファンソン博士がCNNに語ったところによると、検査した約9000人のうち、陽性反応を示したのは1%未満。このうち約半分が無症状だったという。
 この徹底した検査が、アイスランドの成功の最大の要因だ。その結果、感染者を早期発見して経路を追跡できたうえ、感染者の早期隔離で感染拡大を防ぐことができたからである。
 アイスランドでは、100人以上の集まりを禁止し、中高大学を休校としたが、ほかの欧州諸国のような厳しい行動制限は行わなかった。それは、ウイルスを追跡できるデータが揃っていたからだ。アイスランドが検査を始めたのは2月の初め。対策は他の欧州諸国より断然早かった。
 「人口が少ない島国だからできた」という声があるが、ステファンソン博士は「人口の規模は関係ない。準備態勢の問題だ」と言い切る。アイスランドでは、感染拡大が収束するまで、少なくとも全人口の約13%にあたる5万人の検査を実施するという。
 「徹底した検査」と「感染者隔離」。日本は、この2つがまったくできていない。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

【読者のみなさまへ】本メルマガに対する問い合わせ、ご意見、ご要望は、私のメールアドレスまでお寄せください。 → junpay0801@gmail.com

タグ :  , , , ,