連載361 山田順の「週刊:未来地図」告発!日本を焼け野原にした“コロナ戦犯”たち(下)

「世帯30万円」が「一律10万円」裏事情

 現在、給付が遅いと国民の不満爆発中の「10万円給付金」だが、当初、この案を今井氏は認めなかった。3月末、「10万円給付金」案は、野党ばかりか自民党内でも主流の案だったが、4月になると急にたち消えになった。
 なぜか? それは、今井氏と麻生太郎財務相(79)、そのバックの財務省が認めなかったからだ。そして、自民党の岸田文雄政務会長(62)が丸め込まれ、その結果、「減収世帯30万円支給」が打ち出された。
「読売新聞」(4月14日、『現金給付 覆った首相案…「一律10万円」麻生氏異論』)によれば、今井補佐官が「一律給付しても効果がないのは、(リーマン・ショック後の)定額給付金の時に実証されています」と進言。リーマン時に首相だった麻生財務相も「2度と同じ失敗はしたくない」と異論を唱えたという。もちろん財務省はハナから現金給付に反対した。岸田政調会長がこれに取り込まれ、最終的に、安倍首相、麻生氏、岸田氏で10万円案を却下したという。こうして、4月7日、緊急事態を宣言とともに、緊急経済対策が閣議決定されたというのが、ことの経緯だ。
 しかし、「減収世帯への30万円給付」はあまりにも評判が悪く、国民の苦情が殺到した。これに、危機感を覚えた公明党の斎藤鉄夫幹事長(68)は、「経済対策はすべて首相官邸内の一部で決めて、党に知らされるのは後。それでいいんですか」と官邸を批判した。これを受けて、4月16日、公明党の山口那津男代表(67)は連立離脱をちらつかせて、首相に「一律10万円給付」を直談判した。
 この事態に、まさかこんなことになると思わなかった首相は、慌てて岸田氏に電話でこれを伝えた。そして、官邸に麻生氏を呼んで経済対策の修正を指示。続けて二階俊博幹事長(82)、岸田両氏とも会談して、「一律10万円給付」を復活させたのだった。
 「安倍一強」とは言うが、なんの指導力もなく、取り巻きにいいようにされているだけなのである。

“官邸パシリ”、“官邸の犬”、2人の大臣

 そんな官邸取り巻きの1人で、ほとんどパシリをやらされているのが、新型コロナ対策の担当に指名された西村康稔経済再生担相(57)だ。単なる“官邸の犬”という見方もある。
 彼も、灘高、東大、通産省というエリートである。すでに衆議院議員を6期務めたので大臣になって当然だが、官僚色が抜けきれない。
 つまり、国民より権力に従い、国民に対しては上から目線である。それが、大阪府の吉村洋文知事(44)への、「なにか勘違いをされているのでは。強い違和感を感じています」発言になった。
 もう1人、パシリというより茶坊主で、国民に対して完全な上から目線なのが、萩生田光一文科相(57)だ。学校休校に関してなんの対策もなく、オンライン授業をやってみたらなど、政策は全部丸投げ。「9月新学期」論が起こると、「ひとつの利点はある」と言ったきり、態度を保留した。なにもやる気がないのである。
 これは、大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入でトラブったとき、問題を先送りしただけでなにもしなかったことと同じだ。
 ベネッセとの癒着、加計学園との癒着などの疑惑を持つ首相の“オトモダチ”だけに、今回コロナ禍のなかでは目立ってはいない。しかし、かなりの戦犯と言っていいだろう。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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