連載386 山田順の「週刊:未来地図」血迷った中国、愚かすぎる習近平: 世界を敵に回す「戦狼外交」の行く末は?(上)

 中国が「香港国家安全法」を施行したとき、正直、私は、習近平(シー・チーピン)主席はどうかしていると思った。しかし、いまやその思いは確信に変わっている。習近平は、中国の歴代指導者と違い、中国人らしい知恵も知略もない愚かな指導者だ。アメリカはもとより、オーストラリア、インド、EUにも喧嘩を売り、わが国にも、尖閣諸島、沖ノ鳥島で“挑発”を繰り返している。
 もはや、中国は血迷ったとしか思えない。
 これでは、中国は世界中から嫌われ、「自壊」していくほかないだろう。習近平は自己利益ばかり追求するトランプ大統領と同類だ。しかし、トランプは大統領を辞めれば終わりだが、習近平は“終身皇帝”だ。

突如として、沖ノ鳥島で海洋探索を開始

 東京から1740km、小笠原諸島の父島から南へ910km、沖縄から1100km。日本列島からはるかに離れた太平洋の海域に、日本最南端の領土、沖ノ鳥島は浮かんでいる。
 この海域で、海上保安庁の巡視船が中国の調査船を発見したのは、7月9日のこと。以後、毎日のように、中国船は日本の排他的経済水域(EEZ)内で、海洋調査活動を行っている。
 困り果てた日本政府は、中国政府に正式に抗議したが、中国はどこ吹く風。7月18日、中国外務省・華春瑩(ホァ チュンイン)報道局長は記者会見で、「(海洋調査の)理由は簡単。とても簡単。国連海洋法条約に基づけば、沖ノ島礁は“岩礁”であり“島”ではないから」と述べて、日本の抗議を完全に無視したのである。
 沖ノ鳥島が岩礁であるか島であるかは解釈次第だが、国際的に見てここは日本の領土である。「ただの岩だ」と主張して、日本のEEZを否定しているのは中国と韓国だけだからだ。この2国以外に、沖ノ鳥島に関して日本領ではないと文句をつけてきた国はない。
 それを考えると、中国の行動は、日本に対する“挑発”、あるいは“嫌がらせ”と言うほかない。

尖閣諸島、南シナ海でエスカレートする中国

 中国は、尖閣諸島でも、わが国への挑発行為をエスカレートさせてきた。国内のコロナ禍が一段落したのと時を同じくして、中国海警局の艦船の尖閣接近が目立つようになり、接続水域侵入が常態化した。そして今月になると、ついに領海侵犯までしてくるようになった。しかも、中国は日本政府に対し、「尖閣は中国領だから漁船を近づけるな」と通達してきた。
 こんなことは、2012年9月の尖閣諸島国有地化以降なかったことだ。
 この事態に、ついに自民党内でも中国に対する反発が最高潮に達した。いまとなっては遅すぎると言うほかないが、7月8日、自民党は外交部会で、習近平の国賓訪日中止を要請する決議案を可決した。
 もちろん、この決議にも中国は反発し、日本政府に抗議をしてきた。最近の中国は、どの国に対しても「抗議、抗議」のオンパレードである。
 尖閣での挑発と時を同じくして、中国は、南シナ海での行動もエスカレートさせた。すでに7つの人工島はほぼ完成し、実効支配に入っているというのに、それには飽き足らず、今度は島を中国の行政区に組み込んでしまったのである。4月20日、中国政府は海南省三沙市に新しい行政区の「西沙区」と「南沙区」を設けると発表した。つまり、西沙諸島は海南省三沙市西沙区に、南沙諸島は海南省三沙市南沙区になったのである。
 当然だが、これにはベトナムなど周辺国が猛反発。アメリカも怒った。しかし、中国は意に介さず、南シナ海で軍事演習を始めたので、アメリカも対抗して空母「ロナルド・レーガン」と「ニミッツ」を派遣さざるをえなくなった。 現在、この2つ空母打撃群は南シナ海に展開している。(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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