2024年、日本経済と円はさらに衰退 なぜもう2度と好景気と円高はありえないのか? (中1)

2024年、日本経済と円はさらに衰退
なぜもう2度と好景気と円高はありえないのか? (中1)

(この記事の初出は2024年1月2日)

取引の約44%がドル、円は約8%に過ぎない

 それでは、ここからはドル円が今後どうなるかを中心に、日本経済の今後を展望してみたい。
 まず、大前提として、世界の基軸通貨となっているドルの現在地を見なければならない。いくらドルの力は衰えたとはいえ、世界各国は準備通貨としてドルを大量に持っており、ドルは世界の外国為替市場における取引高で44.2%と圧倒的なシェアを誇っている。
 つまり、これが続く限り、レイ・ダリオが言うビッグサイクルにおけるアメリカの経済覇権はそうすぐには衰退しない。これに対して円は、取引高シェアでは第3位であるが、その割合は8.3%に過ぎない。
 ちなみに第2位はユーロで15.3%、第4位はポンドで6.5%、中国の人民元は第5位で3.5%である。人民元は、ウクライナ戦争以後、ロシアとの貿易拡大などでシェアを伸ばしているが、国際金融でドルを脅かすことすらできていない。
 なによりも、中国経済は欧米との貿易取引に大きく依存しているので、この状況ではアメリカ覇権にとって代わることなどできない。

チャレンジング発言と量的緩和の維持

 昨年、ドル円は年初131円台から始まり、紆余曲折を経て年末141円台で終わった。つまり、ずっと円安基調であり、そのピークは10月半ばから11月半ばにかけての150〜151円台だった。
 ただし、このピーク以後、急速に円高に動き、12月半ばには一時的に140円台を記録した。
 これは、植田日銀総裁の「チャレンジング発言」により、日銀がゼロ金利・量的緩和の解除に動くのではないかと見られたからだとされる。さらに、FRBのパウエル議長が、FOMC会合後の会見で追加利上げの可能性を残しつつも「利下げのタイミングを協議した」と発言したので、一気に円高にふれたのである。
 このとき、多くの金融専門家が、140円突破は確実、2024年には130円台になると言ったが、そうはならなかった。
12月20日、日銀が金融政策決定会合で、現状維持を決めると、円はふたたび下落した。以後、ずるずると円高に戻し、141円台で2023年を終えた。
 いずれにせよ、こうした経緯から、多くの専門家とメディアは、ドル円のレートを動かすのは、日米の金利差であると指摘しし続けた。

日米の金利差だけが円安の原因なのか?

 もはやバカの一つ覚えのように、メディアも専門家も、円安の原因は、日銀が量的緩和とマイナス金利を続けているからだ。そのため、利上げを続けてきたFRBとの間で金利差が開いたからだと言い続けている。
 つまり、円安は日米の金利差が、最大の原因だというのだ。したがって、日銀は一刻も早く金利を上げ、円安を止めるべきだと主張している。
 しかし、日米の金利差だけで、ドル円のレートは大きく変動するのだろうか? たしかに、経済理論から見ればそうなるが、実際は違っている。中長期的に見ると、ドル円相場と日米金利差が連動していない局面は何回もある。
 最近では、日銀がマイナス金利を採用した2016年で、この年のドル円の年間平均レートは109円 。金利差は2.5ポイントになったが円安にはならなかった。
 その後、この金利差はほぼ変わらなかったが、ドル円は2017年112円、2018年110円、2019年109円、2020年107円 と、円安にはならず、100〜110円台を保ってきた。

(つづく)

 

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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