連載490 山田順の「週刊:未来地図」 とうとう株価は3万円突破! 「高所恐怖症」患者激減でバブル崩壊は遠のく?(上)

 2月15日、東証株価(日経平均)は、ついに3万円の大台にのせました(この記事の初出は2月17日)。これは、じつに約30年半ぶりのことで、これまでの常識では「景気がいい」ということです。しかし、そんな事実はどこにもなく、ただ株価が上がるという「バブル」がコロナ禍とともに続いているわけです。しかも、さらに上がるという「強気」(ベア)人間ばかりで、高値を警戒する「高所恐怖症」患者は激減しました。

 はたして株価は今後どうなるのか? バブルは本当に崩壊するのか? 冷静になって考えてみるべきです。 

約30年半ぶりの3万円台の大台回復 

 2021年2月15日午後3時、東京証券市場が閉じるとともに、日経新聞は次のように速報した。 《15日の東京株式市場で日経平均株価は前週末比564円08銭(2%)高の3万0084円15銭となった。終値で3万円を超えるのは1990年8月2日以来、約30年6カ月ぶり。半導体関連のなどの電気機器や機械など景気敏感株を中心に買いが膨らんだ。新型コロナウイルスのワクチン接種が国内でも本格的に始まることへの期待に加え、取引開始前に発表された景気指標も好調で、「コロナ後」の経済回復への期待が高まった》  この記事はあくまで速報であり、株価がなぜ3万円の大台をいとも簡単に回復したのか、本当の理由は書いていない。おざなりに、《取引開始前に発表された景気指標も好調で、「コロナ後」の経済回復への期待が高まった》と書いているだけである。

 しかし、すでに投資家から一般国民まで、株価がそんな理由で上がらないことは知っている。いまや、株価は足元の実体経済とはまったく関係なく、単なる「カネあまり」(緩和マネー)で上がっていることを知っている。

 よって、日経記事の理由はウソなのだが、いまさら、それを指摘しても意味はない。投資家(機関投資家も個人投資家も)にとっては、どんな理由にせよ、儲かればいいだけだからだ。

どこかに行ってしまった「高所恐怖症」患者

 それにしても、昨年のある時期までは、「高所恐怖症」患者の投資家が多かった。

 2月にコロナショックでNYダウも日経平均も大暴落すると、悲観論が世界中を覆い尽くした。それ以前の「適温相場」が続いてきたときに発生した高所恐怖症は、ここで現実になったのだから、以後、いくら株価が上がっても高所恐怖症患者は減らなかったのである。

 ところが、昨年半ば、世界中の株価がコロナショック以前の株価を回復したあたりから、高所恐怖症患者は一気に減った。節目が変わったと言っていい。

 とくにアメリカでは、ロビンフッダーたちが株価を引っ張ったため、株価上昇は“お祭り騒ぎ”にまでなってしまった。

 日本でも、「コロナ禍で金融緩和が続くかぎり株価は上がる」という“神話”が信じられるようになり、強気派が増えた。

 そしていま、日経平均は3万円台を回復したので、もはや高所恐怖症患者は一掃されてしまった。

 それを象徴するのが、『「日経平均3万円は通過点」イケイケ相場の”不人気&後伸び銘柄”の見つけ方』(プレジデント・オンライン)という記事だ。また、日経新聞は各証券会社のエコノミストたちのコメントを掲載したが、そこに登場する誰もが3万円は「通過点」という認識なのには、本当に驚いた。誰もが、株価は今後も長期的に見て上がり続けると言うのだ。

(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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