連載552 山田順の「週刊:未来地図」経済も株価も「一人負け」、 ポストコロナで日本は巻き返せるのか?(中2)

連載552 山田順の「週刊:未来地図」経済も株価も「一人負け」、 ポストコロナで日本は巻き返せるのか?(中2)

NYダウと日経平均が連動しなくなった

 こうした経済状況を反映するのが、株価だと言われている。しかし、世界中の中央銀行が大規模な「金融緩和」(おカネを刷って市場にバラまくこと)を行ってきたので、経済状況と関係なく、株価はこれまで上昇に次ぐ上昇を続けてきた。NYダウはなんと3万5000ドル台に達し、日経平均も3万円台に乗せた。

 しかし先週、NYダウは、久しぶりに大きく値を下げた。景気回復が一気に進んだため、FRBが長期金利を上げる可能性があると観測されたからだ。

 NYダウが下げれば、日経平均も下げる。日経平均にいたっては、なんと2000円を超す下げ幅を記録した。ところが、その後、NYダウが回復したにもかかわらず、日経平均は回復しなかった。5月17日(月)の週明け相場も、週末のNYダウが360ドルほど上げたのに、日経平均は終値で259円も下落した。

 NYダウと日経平均が乖離。こんなことは、これまで起こったことはない。

 なぜ、こんなことが起こったのか?

 もっとも大きな原因は、日本株の最大の買い手、日銀が従来のようなETF買いをしなかったことだという。市場関係者に聞くと、「最近の日銀は2%以上の下げでなければ買わない」と言うのだ。

日銀が手を引いたことでなにが起こるのか?

 5月11日からの3日間、日経平均がNYダウにつられて値を下げたとき、それぞれの日の下落率は2%を超えなかった。しかし、5月11日はぎりぎりで2%を下回っただけである。なぜ、日銀は、買いをやめたのだろうか?

 このことに関しては、日銀のみ知ることであり、はっきりしたことはまったくわからない。

 ただ、今回のことで、市場関係者に与えたメッセージ効果はかなり大きい。なぜなら、日銀が市場の大口買主でなくなれば、売り方が優位になる可能性があるからだ。これまで、海外勢、とくに売り仕掛け筋は、日銀の買いを警戒してきた。しかし、今後、それがないとしたら、大きく仕掛けることが可能になる。

 その結果、株式市場は波乱含みとなり、全体としては、下落傾向になっていくだろう。

 つまり、これまでありえなかった、日本の実体経済の状況を株式市場が反映することになるからだ。

 5月12日、ソフトバンクグループは、「純利益約5兆円」という、史上空前の2021年3月期決算を発表した。これは、通期での上場企業史上最高益であり、2018年3月にトヨタが記録した2兆4939億円の2倍にあたる金額である。

 しかし、株価はさして上がらなかった。日本経済の行く末に光明が見えないからではなかろうか。東京五輪が強行開催されれば「売り」、中止されれば「買い」と言われている。ただ、どちらに転んでも、日本株は長期下落のトレンドに入ったという見方が強い。 

(つづく)

この続きは6月16日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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