連載607 山田順の「週刊:未来地図」 「脱炭素」でトクをするのは誰か? なぜ欧米は自滅への道を突き進むのか?(中1)

連載607 山田順の「週刊:未来地図」 「脱炭素」でトクをするのは誰か? なぜ欧米は自滅への道を突き進むのか?(中1)

(この記事の初出は7月6日)

アメリカ、欧州、日本、みな脱炭素一直線

 それにしても、地球温暖化に対する世界の危機感は、ものすごいものがある。温暖化を止めなければ、人類は滅んでしまうと、本気で言う人間(代表は環境アクティビスト)が増えている。

 そこで、世界各国は一刻も早く「脱炭素社会」を構築しなければならなくなった。そうなると、化石燃料は必要でなくなる。石油や石炭は再生可能エネルギーにとって代わられることになってしまった。

 つまり、この先、原油価格が高騰する理由は、長期的には見出せない。

 バイデン政権は、トランプ前政権からうって変わって、今後、史上最大規模のグリーン投資を進めることを決めている。パリ協定にも復帰し、先の英国G7では、石炭火力発電の開発援助や輸出支援を終了させるために具体的な措置を取ることに賛同した。

 これまで、脱炭素政策を主導してきたEUと足並みをそろえ、2050年までにCO2排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」政策を進め始めた。

 アメリカが方針転換すれば、日本もそうせざるをえない。

 菅政権は、昨年9月に成立するやいなや「2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」と宣言した。そして、先のG7の前に、「2030年度に温室効果ガス46%削減を目指す」と表明した。

株主の「ESG」への提案が活発化

 「脱炭素」が世界の方針となると、企業も急遽対応せざるをえない。株主総会でも、地球温暖化対策が議題に上がるようになった。

 たとえば、5月に行われた石油大手のエクソンモービルの総会では、“環境派ファンド”と呼ばれる投資会社「エンジン・ナンバーワン」が会社側に地球温暖化対策の強化を迫った。その結果、この環境ファンド推薦の取締役候補4人のうち3人が選任された。

 同じく、石油大手シェブロンの総会では、同社製品の使用によって発生するCO2排出量を削減する案が承認された。さらに、JPモルガン・チェースの総会では、パリ協定の目標達成のための行動計画の公表を求める株主提案が、5割近い支持を得た。

 このような企業の環境への投資を、最近では「ESG投資」と呼ぶようになった、それに熱心でない企業は、批判されるようになった。

「持続可能な開発目標」(SDGs)を示せ!

 ちなみに、「E」は環境(Environment)、「S」は社会(Social)、「G」は統治(Governance)である。この「ESG投資」の背景にある考え方が「SDGs」だ。「SDGs」とは、「Sustainable Development Goals」(持続可能な開発目標)」のことで、2015年9月の国連サミットで採択されると、世界中で標語として使われるようになった。

 企業の価値も、この「SDGs」に照らして判断されるようになった。「SDGs」に取り組んでいるかどうかで、株価が左右されてしまうようになった。

 だから、株主も、企業に「SDGs」への具体的な取り組みを要求し、「ESG投資」を求めるようになった。ただ、日本企業は、まだ、そこまでの認識はない。

 先日あった三菱UFJファイナンシャル・グループの株主総会では、株主のNGO団体が、パリ協定の目標に沿った投融資の指標や経営戦略を策定・開示するように定款を変更することを要求した。

 もちろん、この議案は反対多数で否決されたが、それでも賛成票は23%にも上った。

(つづく)

 

この続きは9月13日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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