連載643 山田順の「週刊:未来地図」 中国の「第二文革」による経済失速が日本を直撃。 インフレ大転換で生活崩壊! (上)

連載643 山田順の「週刊:未来地図」 中国の「第二文革」による経済失速が日本を直撃。
インフレ大転換で生活崩壊! (上)

(この記事の初出は9月21日)

 明らかに中国がおかしくなってきた。  習近平が進める「第二文革」(第二の文化大革命)によって社会の統制が強まり、経済が失速し始めた。このままいけば、日本も大きな影響を受ける。  現在、世界中でインフレが進んでいるが、中国経済の失速により、インフレはさらに進むだろう。とくに日本経済は、デフレからインフレに大転換する可能性がある。  経済成長なきインフレはスタグフレーションを招き、私たちの日常生活は困窮する。

 

ロックダウンのせい? 夏からの経済失速

 中国は世界に先駆けてコロナ禍を脱し、経済復活を遂げると見られていた。たしかに、夏前まではこの見方が主流で、中国から発表される経済数値もそれを裏付けていた。

 しかし、夏が過ぎたいま、中国経済の減速が鮮明になってきた。

 最近発表された8月の小売売上高は、前年同月比2.5%増で、これは8.5%増だった7月から伸び率が大きく鈍化している。また、1~8月の建設投資は前年同期比3.2%減で、回復が進んでいないことを物語っている。この建設投資の鈍化は景気に大きく影響し、7~9月(第3四半期)の中国の経済成長率は前期比でマイナスになるのではと観測されるようになった。

 夏になって経済が減速したのは、再び行われたロックダウンのせいだと言われている。南京でデルタ株の感染者が発見されると、中国政府は即座に行動制限を実施した。この結果、たしかに消費は落ち込んだ。

 中国政府は「ゼロコロナ政策」をとっているので、これまで感染者が出るたびにロックダウンを繰り返してきた。9月に入ってからも、アモイで感染者が出て、いま福建省はロックダウン中である。

 しかし、ここにきての中国経済の減速は、ロックダウンのせいばかりではない。習近平政権が始めた「第二文革」(第二次文化大革命)の影響も大きい。また、アメリカを中心に進められてきた「中国デカップリング」(サプライチェーンからの中国切り離し)も、じわじわと効いてきている。

なぜ中国政府は恒大を救済しないのか?

 中国の経済減速を象徴するように、いま、中国最大級の不動産会社の恒大集団(エバーグランデ)の倒産が懸念されている。恒大が倒産すれば、負債額は2兆元(約3000億ドル=33兆円)とされるので、リーマンショック並みの影響を世界経済に与えるのではないかと言われている。NY株価も、恒大が起因となって下落した。

 リーマンショックを引き起こしたリーマンブラザーズの負債額は約6000億ドルだった。恒大の負債額はその半分だが、中国の不動産バブルの崩壊を引き起こすには十分な額だ。そのため、中国政府は恒大を救済すると見られてきたが、それは観測だけに終わった。

 中国政府は9月14日、「恒大は9月20日の利払いを履行しない(政府による救済はない)」と表明した。

 なぜ、中国は不動産バブルの崩壊を防がないのか?  それは恒大の倒産が、昨年来、北京が阿里巴巴(アリババ)や騰訊控股(テンセント)などの巨大IT企業に対して行ってきた厳しい統制と同じ文脈上にあるからだ。

 習近平主席の政治経済政策は、昨年秋から明らかに変わった。 (つづく)

 

この続きは11月4日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。  ※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

 

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