連載699 地球温暖化の不都合な真実(1) 「脱炭素」を進めれば進めるほど貧しくなる! (上)
(この記事の初出は1月4日)
愛車のEVを爆破したフィンランド人
昨年の暮れ、話題になったユーチューブの動画がある。フィンランド発のこの動画には、EV(テスラのModel S)をダイナマイトで爆破して喜ぶ人々の姿が写っている。
いったいなぜ、彼らはEVを爆破したのだろうか?
このクルマの持ち主は、フィンランドの田舎町ヤーラに住むツォーマス・カタイネン氏。カタイネン氏はEVの大ファンで購入した中古のModel Sを乗り回していたが、1500キロ走った時点で警告ランプが点滅。テスラのディラーに持ち込んで点検を依頼した。
待たされること、1カ月。出てきた回答は「故障ではなく、バッテリー交換が必要」とのことで、その費用を聞くと、なんと2万ユーロ(約260万円)。カタイネン氏はびっくり仰天した。3万5000ユーロ出せば、最新型のModel Sの中古が買えるからだ。
もちろん、電池交換を断念したカタイネン氏は、その後一計を案じて、「Pommij?tk?t」というユーチューバーに連絡を取った。Pommij?tk?tは、フィンランド語で「爆弾野郎」という意味で、やって来た爆弾野郎のチームは、ダイナマイト30キロでEVを木っ端微塵に吹き飛ばしてしてしまった。
運転席にはイーロン・マスクの人形を置き、カウントダウンをしてスイッチオン。爆発と同時に集まった人々が拍手をし、乾杯する有様が、動画には生々しく写っていた。
中国では「EVの墓場」が出現、拡大中
もうよく知られていることだが、EVは車載バッテリー(リチウムイオン電池)が「命」である。耐用年数も航続距離も電池次第で決まる。
一般的にEVの車載バッテリーの容量が70%を下回るまでの期間は、6~10年とされている。そうなると、バッテリー交換が必要で、その際、使用後のバッテリーをどうするかという問題が生じる。多くは蓄電用としてリユースされるが、廃棄処理する場合は、専用の処理工場と専門技術を持つ人材が必要となる。
現在、世界一EVが普及しているのは中国だが、今年になって「EVの墓場」が次々に出現し、拡大中だ。大都市のなかにある空き地に、EVが丸ごと捨てられているのだ。
中国ではEV普及のために、大量の補助金がバラ巻かれた。そのため、EV車によるカーシェアリングのベンチャーが500社もできたが、昨年で補助金が打ち切られてしまい、困ったベンチャーはクルマを不法投棄し始めたのである。
電池寿命が切れるのが早く、長距離も走れないというEVは、まだまだガソリン車の利便性、性能には、はるかに及ばない。単に、走る際に、二酸化炭素を出さないというだけだ。そんなクルマが、なぜ未来のクルマの主役なのだろうか?
(つづく)
この続きは2月7日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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