連載869 底なし円安の先にはハイパーインフレが!? 日本人自身が「資産フライト」(円売り)すれば…(中1)

連載869 底なし円安の先にはハイパーインフレが!? 日本人自身が「資産フライト」(円売り)すれば…(中1)

(この記事の初出は9月13日)

 

いまや日本のGDPはアメリカの5分の1

 7年前の2015年、私は円に関して2冊の本を書いた。1冊は『永久円安』(ビジネス社)、もう1冊は『円安亡国』(文藝春秋、文春新書)である。
 どちらも、円安が日本経済に与える影響について書いたものだが、今日、行われている議論は、この本のなかにすべて書き込んである。すなわち、円安は日本経済にとって、私たちの暮らしにとって、決定的にマイナスだということだ。
 『円安亡国』の「第8章:円安貧乏とドルシフト」で私は、次のように書いている。
《円を持っているだけで、資産が目減りする。円安が進めば当然そういう時代がやってくるので、私たちは「円・アタマ」から「ドル・アタマ」に切り替えなければならない。
 すでに「1ドル200円時代」が視野に入ってきている。短期的には1ドル150円という、これまで約30年間続いてきた「円安・円高」のレンジ内の上限で収まるという見方もできるが、長期的には150円は軽く突破してしまうだろう。
 それがいつになるかは予測できないが、それほど先のことではない。
 次の「図表36」は、日米のGDPのこれまでの推移である。1980年代、アメリカのGDPは日本の約2倍だった。しかし、1990年代になると日本はほぼ成長しなくなったために日米のGDPの差は広がり、2000年代に入ると約3倍に拡大した。そして、いまや4倍近くに拡大しようとしている。日本はすでに中国にも抜かれて、あっという間に2倍もの差をつけられている。このような国の通貨が今後強くなることがありえるだろうか?》
 つまり、「金利差」などより「GDP」が示す経済力(=国力)のほうが問題なのである。通貨は発行国の国力によって担保されるからだ。
 ちなみに、この本を書いた当時の日本のGDPはアメリカの4分の1だったが、現在(2021年の統計データ)は、5分の1程度まで低下している。

2030年、2050年の日本経済の順位

 2020年から2年間、コロナパンデミックという不確定要素に見舞われたとはいえ、世界各国の基本的な経済成長予測は変動していない。
 この先の世界各国のGDP予測を見れば、日本の凋落は見るも無残だ。IMFの「世界経済見通し」(WEO)データベースなどから予想される2030年、2050年のGDPランキングは次のとおりだ。

[2030年 世界各国のGDPランキング]
1、アメリカ31兆ドル
2、中国29.2兆ドル
3、日本7.2兆ドル
4、ドイツ6.2兆ドル
5、インド6兆ドル
6、イギリス4.2兆ドル
7、フランス4兆ドル
8、カナダ3.4兆ドル
9、韓国2.6兆ドル
10、インドネシア2.5兆ドル

[2050年 世界各国のGDPランキング]
1、中国52.5兆ドル
2、アメリカ52兆ドル
3、インド20兆ドル
4、日本10.5兆ドル
5、ドイツ9.8兆ドル
6、イギリス7.3兆ドル
7、フランス6.7兆ドル
8、カナダ5.7兆ドル
9、インドネシア5.2兆ドル
10、オーストラリア4.9兆ドル

 この予測は、どう見ても日本に甘く、現在の成長率を見れば2030年時点で7.2兆ドルに達するのはほぼ不可能だ。とすれば、ドイツに抜かれている可能性のほうが高い。2050年においても、世界第4位を維持しているというのも考えづらい。
 なぜなら、2050年の日本の人口は1億人を割り込んで9515万人、65歳以上の高齢人口は3746万人(39.6%)、生産年齢人口4930万人 は(51.8%)となっているからだ(国土交通省データ)。
 近未来、ほぼ確実に経済が縮小する国の通貨を誰が欲しがるだろうか。一時的な投機は別として、円安基調は今後ずっと続くトレンドなのである。


(つづく)

この続きは10月12日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

タグ :