日本発祥の「塩パン」。バターをたっぷり包み込んだシンプルなパンだが、近年は韓国でソグムパン(sogeumbbang)として大ブームとなり、その人気はニューヨークにも拡大。専門店がオープンするなど、新たなトレンドとして注目を集めている。
そこで今回は編集部が実際に3店を食べ比べ。それぞれの食感や味わい、価格、個性をレビューした。

1. Justin’s Salt Bread
2025年12月にイーストビレッジにオープンした、ニューヨーク初の塩パン専門店。運営するのは、日本のラーメン店、Okiboruのチーム。

店内には畳のスペースもあり、ゆったりくつろぎながらドリンクやパンを楽しんでいる人もいる。オープン直後から TikTok や Instagram で話題となっている人気店だ。
実食レビュー🥖

今回食べた3店の中で、「日本の塩パン」に最も近い印象だった。見た目は細長くシンプルだが、ひと口食べると中は驚くほどもちもち。外側は軽く香ばしく、バターは主張しすぎず、生地そのもののおいしさが際立つ。ディナーロールのような優しい味わいなので、スープやサラダなどの相性も良さそうだ。抹茶クリームをつけるとスイーツ感が増すが、まずはプレーンだけで味わうのがおすすめ。
価格
プレーン塩パン $4.50
抹茶クリーム $1.50
住所
58 2nd Ave.
営業時間
月曜定休
火〜金 9:00-18:00
土 10:00-19:00
日 10:00-18:00
2. Salt Bread Ko
コリアタウンにある韓国式塩パン専門店。韓国で大ブームとなった「ソグムパン(塩パン)」を看板商品に掲げ、毎日店内で焼き上げている。
公式サイトでも「毎時間、焼きたてを提供」と強調するほど、焼きたてにこだわっているのが特徴。また、フランス産AOP認証バターを使用するなど素材にもこだわり、プレーンの他、のりやパンダンココナッツなど韓国らしいフレーバーもラインアップ。SNSでは「韓国で食べたあの塩パンがニューヨークでも味わえる」と話題を呼び、コリアタウンの人気店となっている。

実食レビュー🥖

今回は、プレーン2個と、のりごま油スプレッド(Nori Sesame Oil Spread)のセットを実食。スプレッドはスイートクリームや抹茶など数種類から好みのフレーバーを選べる。中でものりごま油スプレッドはかなり個性的で、ひと口食べると想像以上にのりの風味とごま油の香ばしさが広がる。シンプルな塩パンに合わせることで一気に和のアクセントが加わり、味の変化を楽しめるのが面白い。

塩パンは、外側はパリッと香ばしく、中は何層にも重なった生地で、塩パンというよりクロワッサンに近いリッチな食感。バターの風味が非常に強く、ほんのり甘みも感じられるため、食事パンというよりペストリーに近い印象だった。豊富な種類のスプレッドを変えるだけで味の印象が大きく変わるのも面白い。選ぶ楽しさもあるため、手土産にしても会話が弾みそうな一品だ。

プレーンだけでなく、店内には抹茶やあんバターなどのスイーツ系から、卵やツナなど食事系まで、塩パンを使ったさまざまなメニューが並ぶ。何度訪れても違う味を楽しめるのも魅力だ。今回は抹茶クリームも実食したが、濃厚な抹茶クリームとほんのり塩味のあるパンの相性が良く、スイーツとしても満足感のある一品だった。
価格
プレーン塩パン2個+スプレッド $12.00
住所
4 E. 32nd St., Store 5
営業時間
月曜定休
火〜日 11:00-19:00
3. Papa d’Amour
2025年5月にグリニッジビレッジにオープンしたベーカリー。手掛けるのは、2013年にクロワッサンとドーナツを掛け合わせた「クロナッツ」を生み出し、世界的なブームを巻き起こしたフランス人パティシエ、ドミニク・アンセル。

店名の「Papa d’Amour(パパ・ダムール)」は、フランス語で「パパ、愛してる」に近い意味で、ドミニク・アンセルの子どもたちが彼を呼ぶ言葉に由来する。台湾とフランスにルーツを持つ2人の子どもたちへの思いを込め、アジアのパン文化をフランス菓子の視点で表現する新コンセプトのベーカリーとして誕生した。店内には日本の食パンやアジアのエッグタルトなどアジアのパン文化から着想を得た商品が並ぶ。
実食レビュー

メニューに一般的な塩パンはないため、塩パンの進化系で人気商品のソルトベーグルを実食。外側は揚げたようにカリッと香ばしく、中はサクサク。添えられているのは、フランス産の高級ダブルクリームチーズ「フロマージュ・ダフィノワ」のスプレッド。バターのような濃厚なコクとなめらかさが加わり、ベーグルというよりペストリーに近い印象だった。スイーツやスナック感覚で楽しめる。
今回実食した商品の中では最も高価格だが、「普通の塩パンでは物足りない」という人はぜひ試してほしい。アレンジ上手なニューヨークの店ならではの一品だった。
価格
Salt Bagel $8.50(税別)
住所
64 University Pl.
営業時間
8:00-19:00
塩パンはNYに定着している
実際に食べ比べてみると、Justin’s Salt Bread は日本の塩パンに近いもちもち食感が魅力の王道タイプ、Salt Bread Ko はクロワッサンのようなリッチなバター感が印象的でアレンジが楽しい。そしてPapa d’Amour は、塩パンの概念を高級スイーツに広げた進化系だった。
価格はニューヨークでは1個約4.50~8.50ドル(約720~1360円、1ドル=160円換算)と決して安くはない。一方、日本の塩パン発祥の店として知られる「パン・メゾン」では、看板商品の塩パンが120円で人気を集めている。また、高級系として知られるTruffleBAKERYの「白トリュフの塩パン」は294円(税込318円)。高級食材の白トリュフを使いながらも手頃な価格で楽しめることから、多くのファンを集めている。
実際に3店を訪れてみると、「ブーム」というより、ニューヨークの文化に既に定着し始めている印象を受けた。平日の午前中にもかかわらず、焼きたてを求めて立ち寄る人や、常連らしき客の姿も目立った。日本ではプレーンの塩パンをそのまま味わうのが主流だが、ニューヨークではスプレッドやクリームを合わせた“甘じょっぱい”アレンジを楽しむのが人気のようだ。自分好みにカスタマイズできる自由さがニューヨーカーたちを惹きつけているのかもしれない。
日本で生まれた塩パンが、韓国で人気を集め、ニューヨークでは新たなアレンジを加えられながら広がっている。シンプルだからこそ、土地ごとの食文化に合わせて変化していく。そんな塩パンの面白さを感じた。
取材・文・写真一部/藤原ミナ

















