第3回 「不妊治療」のニューノーマル

 

働く女性たちのニューノーマル 
Global Fertility and Genetics

第3回 「不妊治療」のニューノーマル

 

 不妊治療の技術はまさに日進月歩で、数年前と比べ体外受精の成功率は飛躍的に上昇。不妊治療の末、40歳を過ぎて妊娠・出産という夢を叶える女性もずいぶんと増えた。卵子凍結の社会的広がりや、卵子提供や代理出産というオプションが加わったことも大きい。そして今、不妊治療は次のフェーズへと進みつつある。

 例えば、不妊治療の成功を左右する卵子の質。卵子の質を改善する抜本的な治療や薬はいまだ開発されておらず、卵子を若返らせることなど夢のまた夢とされてきた。だが数々の研究の結果、いくつかのサプリメントが二次的効果として卵子の質改善に有効だというのだ。例えば、長寿や若返り効果があると注目の次世代サプリ「NMN(Nicotinamide MonoNucleotide)」。その効果は細胞レベルに達すると言われており、卵子の元となる卵母細胞の質が若返って受精しやすくなったり、受精後の細胞の発育助長など生殖能力が改善したとの報告も上がっている。また、「DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)」を含むサプリメントは、女性の体内で妊活に重要な女性ホルモン、エストロゲンを作る材料となり、摂取することで妊娠率の上昇や着床率の改善、卵子の質向上といった効果が期待される。

 そのほか、糖尿病薬として知られる「メトホルミン」服用による効果や、IVFの過程において「HGH(ヒト成長ホルモン)」を投与し卵子の成長を助長させるなど、当クリニックでも必要に応じてこれら代替医療も積極的に取り入れ、東洋医学と西洋医学を融合したアプローチを提供している。

 また、自然治癒力を利用した再生医療PRP(多血小板血漿)も卵巣機能の活性化、その結果として卵子数の増加や卵子の質向上が期待されるほか、子宮内膜へ投与することで着床率の改善や妊娠継続の一助となるなど、これまでは不可能だったことを可能にする術が次々と見出されてきた。

 このような不妊治療の発展は、まさに女性の高学歴化やキャリア志向などによる晩婚化・非婚化といった社会的風潮の副産物でもある。この先働く女性はますます増え、多くの女性が「卵子凍結」を積極的に利用するようになるだろう。妊娠の効率性を求め、染色体異常による流産や遺伝子異常を選別する着床前検査も当たり前になり、赤ちゃんの健康も今以上に補償される。不妊治療はもはや不妊を解消する医療だけではなく、「妊娠」という女性の素晴らしいライフイベントをサポートする一つの手段としてカテゴライズされるようになるだろう。そんな未来を見越して不妊治療は「assisted reproductive technology(生殖を補助する技術)」と呼ばれてきたのかもしれない。そして、『不妊』という言葉が世の中から消える日もやってくるのかもしれない。

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