連載944 世界の街角から消えた日本人
いよいよ日本は本当に没落するのか? (下)
やがて歯止めが利かなくなる金利上昇
海外でこれほどまでに日本のプレゼンスが落ちているというのに、日本政府は相変わらず、経済を本気で再興する気がない。しかも、いままで通りのバラマキを続けて行こうとしている。
防衛費増強は仕方ないとしても、「スタートアップ支援」だの「異次元の少子化対策」だの、中身が見えないまま税金をつぎ込もうとしている。国債もどんどん発行して、借金による財政運用を続けていこうとしている。
そんな状況を海外から見ながら、私が思うのは、どうやら本当に日本は完全に没落してしまうのではないかということだ。これまで、私は絶望的な言説を書き綴ってきたが、それがあと、2、3年で本当になってしまうのではないかと、本気で危惧するようになった。
昨年暮れ、ついに日銀は政策転換をせざるをえないところまで追い詰められ、金利を上げた。そして、今月5日、財務省が実施した10年物国債の入札で、最高落札利回りが0.5%と7年半ぶりの水準になった。たった2週間ほどで長期金利は上限に到達したのだ。
これは、日銀がいずれ金利を抑えきれなくなると、関係者が見ている証拠だ。こうなると、この先インフレはさらに進み、いつか金利上昇の歯止めが利かなくなる。
金利上昇は、即、財政負担の拡大を招く。そうなれば、この国はさらに国債を発行して赤字を穴埋めするだろう。
国債の格下げによって国は信用を失う
昨年暮れ以来、日本国債の格下げが検討されている。S&P、ムーディーズ、フィッチの大手3社は、いずれも、日本国債の格付けを現行の「シングルAマイナス」からダウングレードする可能性があるという。
日本国債は、アベノミクスが始まった直後、2014年11月に消費増税の延期が決まった時点で格下げされたのが最後の格下げで、これによりG7国のなかで最低の格付けになった。
では、2014年11月からの約8年間で、日本の財政状況はどうなったか? アベノミクスが金融緩和を続けたため、政府債務は774兆円から1026兆円まで膨張した。これは、GDP比で264%。こんなひどい財政状況の国は破綻国家以外ではありえない。
では、国債が「シングルAマイナス」から「「トリプルBプラス」にダウングレードされるとどうなるのか?
これは信用力の低下を意味するから、まずは社債やコマーシャルペーパー(CP)の発行、銀行間取引でのコストが上がる。さらに金融機関によっては日本国債を担保として認めなくなり、ドルを調達できなくなる可能性がある。
日本国債は、日本という国の信用そのものだから、信用がなくなれば、最終的にハイパーインフレを招くだろう。
(つづく)
この続きは2月15日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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