津山恵子のニューヨーク・リポート
Vol.5 コロナから復活したコミュニティ 緊急事態は5月で解除
この3月、ニューヨークは、真に「復活」した。
地下鉄メトロでマスクをしている人は最近、目に見えて減っている。ランチ、ディナーのお誘いが毎週のように戻ってきた。リモートワークをする人の割合も下がっている。ハグもキスも当たり前。
新型コロナウイルスの爆発的感染で、ロックダウンとなったのが2020年3月。街が無人化してから、ここまで回復するのに丸3年かかったことになる。
24時間鳴り響く救急車のサイレンにビクビクしていた。突如閉店したデリや、病院横にずらりと並ぶ遺体用の保冷車を見て、戦慄した。それらは過去のこととなった。終わったのだ。
先日、ウェストビレッジを歩いていて、ある記憶がよみがえり、グッときた。初めてのワクチン接種を受けた大病院の近くだった。緊張しながらワクチンを受けた後、開放感と安堵感とある種の興奮から、病院近くの通りを彷徨ったのを思い出したからだ。

レストランがオープンし始めたころ、近所のベーグルショップに行った。かつては20人以上もの従業員が注文を取り、ベーグルをこさえ、小走りで店内を行き来していた。しかし、20年夏ごろは、わずか数人が残るのみ。私たちが失ったものは、命を奪われた家族や友人だけではない。雇用、コミュニティの結びつき、街の活気、人々の収入源とあまりに広範囲に渡っているのを見て、愕然とした。
ベーグルショップに最近、行ってみた。元の従業員がぶつからんばかりに駆け回り、お客は2フィートの距離を取らずに長蛇の列を成している。
バイデン大統領は、新型コロナに関する国家緊急事態を5月11日に解除する。すでに、マスクの着用やワクチン接種などは、学校やビジネスに義務付けられてはいない。
3月23日現在、ニューヨーク市内の感染者数は401人(7日平均)、死亡者は11人。ニュージャージー州では、それぞれ534人、一人(ニューヨーク・タイムズより)と極めて低い水準。しかし、米国全体ではこれまでに、1億人超が感染し、11万人超が命を落とした。失ったものは、大きすぎるし、この3年間の復活への道、人々やコミュニティの努力を忘れてはならないと思う。

津山恵子 プロフィール
ジャーナリスト。ザッカーバーグ・フェイスブックCEOやマララさんに単独インタビューし、アエラなどに執筆。共編著に「現代アメリカ政治とメディア」。長崎市平和特派員。元共同通信社記者。
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