連載1020 2070年人口3割減8700万人の衝撃 じつは実際はもっと深刻! (完)
(この記事の初出は2023年5月9日)
「村じまい」「町じまい」という「終活」
人口減社会で確実なことは、誰もがいずれ高齢者になり、少子化で次世代がいないのだから、過疎地、少人口地域に住むことができなくなることだ。バス路線、宅配便配達などの日常サービスが廃止されれば、移住せざるを得なくなる。どの村、どの町も同じように住めるなどということはあり得ない。
同じように、街の商店街にしても、どの街の商店街も同じように存在し続けることはあり得ず、活性化するところはあっても、それ以上に衰退、消滅するところのほうが多くなる。
つまり、なにをすればいいかと言えば、「村おこし」「町おこし」ではなく、「村じまい」「町じまい」である。もっとはっきり言えば、消滅可能自治体はそれを受け入れ、消滅へのロードマップをつくることだ。そのほうが、ダメージが少なくてすむ。人生に「終活」があるように、村や町も「「終活」すべきなのである。
都会から移住者を受け入れる。そのために補助金を出すなどというのは、愚の骨頂である。そんなことをするなら、地方都市なら、その周辺の過疎地から人々を街中に移住してもらい、コンパクトシティとしてやっていく道を探るべきだ。そうすればダメージは少ない。
富山市はコンパクトシティの成功例なのか?
コンパクトシティ化に成功しつつあるとされる事例がある。富山県富山市だ。ただし、本当に成功するかどうかは、まだわからない。コンパクトシティにおいては、人々は長年暮らした郊外、過疎地域から生活基盤を都市の中心部に移すのだから、すぐにできるわけがない。円滑に移住できたとしても、数年、いや10年以上かかるだろう。
2007年、富山市は、国が認定する「中心市街地活性化基本計画」の第1号になった。以来、富山市では、中心市街地に都市の機能を集約し、移住者を受け入れる街づくりをしてきた。そのため、中心市街地に移住する住民や事業者には助成金を交付した。そうしながら、郊外に住み続ける人向けには、路面電車やバスの乗り継ぎを改善して都市中心部にアクセスしやすくした。
その結果、富山市の中心市街地は転入超過となり、住宅建設や百貨店の建て替えなどが進んだ。地価も住宅価格も上がった。インフラ維持管理などの行政サービスも効率化できるようになった。
それでも人口減少、日本の縮小は続く
コンパクトシティのコンセプトは、1970年代後半のアメリカが発生である。郊外化が行き過ぎて、都市の中心部が空洞化するドーナツ現象の解消のためにと、インフラ維持管理などの行政サービスの効率化のために考え出されたものだ。
したがって、人口減社会を前提にしていない。
コンパクトシティ化は、富山市以外にも、秋田県秋田市、栃木県宇都宮市、新潟県長岡市など多くの自治体で進められた。しかし、成功したと言えるところはいまのところない。
つまり、いくらコンパクトシティにしても、全体の人口減少は止まらない。人口減の解決策は、人口増しかなく、それには2択しかない。出生率を上げて子供の数を増やすこと。移民を入れることの2択だ。
こうして、今後、日本はどんどん縮んでいく。それを受け入れ、どのような社会をつくっていくべきなのか名案などない。なにしろ、日本は少子高齢化では世界の最先端を行っているからだ。ただ、「地方創生」だの「町おこし」など馬鹿げた税金の使い方はなんの効果もないので、それだけはやめるべきだ。
(了)
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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