連載1035 中国デカップリングは日本を確実に貧しくする。 耐えられるのか、日本経済? (上)

連載1035 中国デカップリングは日本を確実に貧しくする。 耐えられるのか、日本経済? (上)

(この記事の初出は2023年6月13日)

 アメリカと中国との間で、貿易戦争が起こり、それが発展して「新冷戦」になって以来、日本にとって、「中国デカップリング」(China decoupling)は最大の問題である。  ここ数年、日本企業は中国撤退を進めてきたが、はたして、どの程度まで進んだのだろうか? 現在、半導体分野はそうせざるをえなくなったが、まだ撤退できないでいる企業も多い。  日本の保守言論は安易に「脱中国」「反中国」を唱えるが、中国デカップリンをやればやるほど、日本経済は大きな打撃を受ける。日本は確実に貧しくなる。はたして、日本経済はそれに耐えられるのだろうか?

 

「中国撤退は難しい」はすでに昔話

かつては誰に聞いても、「中国撤退は難しい」と言っていた。メディアも「中国でのビジネスは出ていくよりも撤退するほうががはるかに難しい」と言っていた。  それは、中国が共産党独裁国家で、なにをするにも当局の許認可が必要だからだ。当局の許認可がなければ、外資系企業は清算ができない。清算して撤退されたら、中国側、とくに地方政府は税収が減るうえに雇用も減るので大いに困る。そのため、あの手この手の嫌がらせをする。  その実態が、メディアを通して報じられることが多かった。  しかし、最近の中国は違う。撤退は、わりとスムーズにできるようになった。外資規制は強くなったものの、清算に関しては法整備が整い、手続きさえ踏めば可能になった。また、かつてできなかった配当送金も可能になった。さらに、地方政府は、企業誘致を最重点とした政策を取らなくなった。  つまり、「出て行くなら、出ていってください」という姿勢に、中国は転換している。  ならば、どんどん出ていけばいいと思うだろうが、そうはいかない。なぜなら、中国は大市場であり、進出した日本企業の多くは儲かっているからだ。儲かっているのに、それを自ら捨てる。そのことが問題なのである。

3通りあるなかで「会社売却」が有利

 中国デカップリングは、国際政治・外交・安全保障における最大のテーマだが、その現場においては、企業の中国撤退、中国との取引停止である。  それをするための方法は、次の3つである。 (1)第3者への会社売却(持分譲渡)  会社(中国現地法人)の持分を第3者に譲渡し、中国市場における営業から撤退する方法。 (2)会社解散・清算 解散・清算の手続きをとり、会社の法人格を消滅させる方法。手続きのオンライン化も進んでいる。 (3)休眠化  会社は存続させるが、一切の活動を停止する方法。  この3つのうち、総合してデメリットが少ないのが、(1)の会社売却である。しかし、これをするには、売却先、すなわち持分譲渡先を見つけなければならない。

(つづく)

この続きは7月6日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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