連載1058 岐路に立つバイデン・アメリカ  「学生ローン」「人種優遇」停止で経済失速も? (中3)

連載1058 岐路に立つバイデン・アメリカ 
「学生ローン」「人種優遇」停止で経済失速も? (中3)

(この記事の初出は2023年7月7日)

 

9月から利息発生、10月から返済開始

 さて、では返済免除を認めないという最高裁判決が履行されるとしたら、なにが起こるのだろうか。
 アメリカメディアのこれまでの報道を見ると、「多くの返済遅延と破産が起こる」のは間違いない。NYタイムズの記事は、「多くの学生ローンの借り手は返済するお金を持っていない。石から血液を絞りとることはできない」と述べている。
 バイデン大統領のお人好しというか、ツメの甘さぶりから、そうなるのは仕方ないという見方もある。なぜなら、バイデン政権は、6月に共和党との間で交わされた連邦政府の債務上限引き上げ合意の一環として、学生ローン返済の猶予を9月末で終了させる法案に署名してしまったからだ。
 そのため、連邦奨学金(ペルグラント)は、9月1日から再び利息が発生し、10月からは返済の義務が生じる。こうなると、アメリカの消費は減退し、経済は減速するだろう。
 私の娘はアメリカの大学と大学院を出ているが、彼女の友人のなかには、いまだにペルグラントを抱えている者がいる。彼らは、いま、頭を抱えている。

学生ローンの債務は一生ついて回る

 日本にも学生ローンがある。それは単に「奨学金」と呼ばれ、奨学金は本来なら給付型であるはずなのに、貸与型である。貸与型奨学金は、単なるローン(借金)だから金利が付くうえ、何年かかっても返さなければならない。そのため、いまや少子化と並んで大問題になっている。
 岸田政権は、「出世払い型の奨学金制度の導入する」「減額返還制度をつくる」などと、奨学金改革を打ち出しているが、まだ方向ははっきりしない。
 いずれにせよ、借金は返さなければならない。このローン地獄から逃れるには、2つの方法しかない。高給を得てきちんと返済するか、自己破産してチャラにしてしまうかだ。しかし、日本は自己破産でローンは消滅するが、アメリカの場合は、政府が税金で貸与しているので債務はなくならない。学生ローンの債務は一生ついて回る。
 教育、とくに大学、大学院における高等教育は、デジタルエコノミーのこの時代、国家のもっとも重要な基盤である。それなのに、アメリカは公教育に熱心でなく、民間に任せている。そのため、大学の授業料は市場原理でいまやバカ高くなっている。親が中間層であっても、その負担には耐えられないくらいのバカ高さだ。
 そのため、アメリカでは奨学金、学生ローンが、それこそ数えきれないほどあり、これを組み合わせて進学する学生が半数以上を占めている。日本の場合、授業料はそれほど高くはないが、経済成長しないなかで中間層が没落しているから、アメリカと同じように大学進学のコストは中間層でも負担しきれないほど高くなっている。


(つづく)

この続きは8月11日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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