ニューヨークの不妊治療クリニックGFGの
アメリカ妊活便り
第8回 未来への備え 〜卵子凍結①
近年、“働くこと”と“子供を産むこと”の両方を求め、また、求められる女性も増えてきた。しかし、女性はキャリア意識が高まる一方、妊娠・出産に対する年齢的、身体的な不安、焦りも募る。そのような社会的風潮の下、今のキャリアも、子供のいる未来も実現可能な選択肢として、働く女性たちの関心を集めているのが「卵子凍結」だ。
「社会的適応」が主流の時代に
卵子凍結とは、卵巣から取り出した卵子を超低温の液体窒素の中で凍結させ、自身が出産したいと望むタイミングまで保存するというもの。超低温では化学変化はほとんど起こらないため、卵子の状態を数十年も変化させないまま保存することが可能となる。
もともと卵子凍結は、がんなど、長期治療を伴う病気による妊孕力(妊娠する力)の低下や卵巣機能の低下を防ぐための、いわゆる「医学的適用」のもつ意義から行われていた。だが時代は変わり、最近では健康な女性が将来の妊娠・出産に備えて妊孕力を温存する「社会的適応」による卵子凍結が主流となりつつある。
理想は20〜30歳での凍結
個人差はあるものの、35歳が出産適齢期のリミットと言われる今、仕事がひと段落し、妊娠・出産するには、いつ卵子凍結を試みればいいのだろうか。
米国生殖医学会(ASRM)では、将来の妊娠成功率を鑑み、20〜30歳に卵子凍結することが望ましいとしている。35歳頃から女性の卵子の数と質は急激に低下し、それによって染色体異常の確率は高まり、妊娠率が低下するからである。
若くて健康な一つの凍結卵子から将来妊娠する可能性は2〜12%。例えば20代で卵子凍結を行う場合、10個の卵子があれば約60%、20個あれば約90%の確率で妊娠できると言われている。ただ、年齢が上がるにつれて妊娠に至るに必要な卵子の数は増える反面、卵子の数は減少する。
40歳過ぎでの挑戦も
では、40歳を過ぎたら、卵子凍結は無理なのか。前述したように、加齢とともに卵子の数、質ともに低下し、妊娠しづらくなるのは事実。だが、年齢による卵子数や質は個人差が大きいのも事実。もしかしたら数回の採卵が必要かもしれないが、卵巣に卵子がある限り、自分史上一番若い「今」、卵子凍結を試みる価値は大きい。日本では卵子凍結や解凍する年齢に上限を設けているクリニックもあるが、当クリニックを含め米国では上限を設けていないところも多く、40歳以上の女性もまだまだ卵子凍結に意欲的である。机上論で自分の望む未来を諦めるのではなく、ぜひ挑戦してほしい。働く女性の新しいライフプランとなりつつある卵子凍結。
次回は、卵子凍結のプロセスや費用、日米の事情などについてご紹介する。

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