連載1091 覇権国アメリカの「内憂外患」 万引き、不法移民、高齢大統領、ウクライナの「4重苦」(下)

連載1091 覇権国アメリカの「内憂外患」 万引き、不法移民、高齢大統領、ウクライナの「4重苦」(下)

(この記事の初出は2023年9月12日)

 

バイデン大統領の最大の問題「高齢不安」

 バイデン大統領にはバラマキ政治以上に大きな問題がある。それは高齢で、はたして大統領としての責務が果たせるのかという「高齢不安」の問題だ。
 この11月20日に、バイデンは81歳の誕生日を迎える。仮に再選されるなら、2期目の最後のころは86歳になる。2021年時点のアメリカ人の平均寿命は76.4歳。また、80歳以上の高齢者の約3割が認知症である。
 4月25日に大統領選への出馬を正式に表明したバイデンは、翌26日の記者会見で、年齢は気にしていないとし、「私が(大統領に)ふさわしいかどうかは有権者が選挙戦を通じて判断する」と述べた。その有権者の判断は、世論調査によると、「ふさわしくない(出馬すべきではない)」が7割を超えている。

ゼレンスキーとプーチンの呼び間違え

 バイデン大統領の「高齢不安」は、どうやっても乗り越えられない。なぜなら、老化は止められないからだ。老化と言えば、いちばんの不安は、なんと言っても「ボケ」(認知障害)による判断力の低下である。
 以下、バイデンの最近の「失言(妄言)」行動録。
◇6月16日、コネティカット州で開催された銃規制法案をめぐる会合で演説。演説の最後を突然「女王陛下万歳!(God save the queen, man!)」と締めくくった。もちろん、原稿にはない。なぜ、英国人でもないのにこんなことを言ったのか、まったく不明。
◇6月27日、選挙資金集めのイベントで、インドと言うべきところを中国と言った。
◇6月28日、ホワイトハウスで、記者団に対して、ロシアのプーチン大統領は「明らかにイラクでの戦争に負けている。国内での戦争にも負けている」と述べた。前日の27日にも、ウクライナ侵攻を「イラクへの攻撃」と述べていた。
◇7月12日、リトアニアの首都ビリニュスで開かれたNATO首脳会議。横に並んだウクライナのゼレンスキー大統領を、「ウラジーミル」と呼んでしまい、「ウォロディミル」と言い直した。ウラジーミルは言うまでもなく、プーチンの名前。
◇7月28日、訪問先のメーン州で自らの経済政策「バイデノミクス」をアピールするイベントに出席。アメリカの製造業は復活するという趣旨の演説を終えた後、この日の最大の目玉であるはずの大統領令への署名を忘れて降壇した。

長引くウクライナ戦争でかさばる巨額援助

 国内がこのように混迷するなか、ウクライナ戦争の長期化が、アメリカ政治・経済に暗い影を落としている。これが、アメリカが直面する4重苦の4番目の問題で、まさに「外患」だ。
1年目を迎えた今年の春、秋までには反転攻勢で決着がつくという報道が多かったが、結局のところ、まだウクライナ軍は、南部のザポリージャ州メリトポリを奪還できていない。
 ただし、ロシア軍は相当弱体化していて、予備兵力も底をついている。メリトポリが陥ちれば、ロシアの敗戦は確実となり、あとはどこまでロシアが負けを認めず、粘るかになる。
 すでに、アメリカとNATO諸国は、戦後処理、停戦処理の協議を開始していると見られるが、日本は戦後復興の大規模援助のツケを回されただけで、この協議には参加できていない。
 いずれにせよ、停戦が成立するまでは、アメリカの巨額援助は続くことになる。
 ドイツのキール研究所がまとめた各国のウクライナ支援額(昨年1月24日〜今年の6月7日)によると、アメリカのウクライナ支援額は427億ユーロ(約11兆円)で、全体の55%を占めている。アメリカ1国だけで、ウクライナを支えているようなもので、戦争が長引けば長引くほど援助額は膨らむ。
 ちなみに、英国は48億ユーロ(6%)、ドイツが33億ユーロ(4%)で、日本は6億ユーロ(0.7%)で7位である。


(つづく)

この続きは10月6日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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