時を得たりと「裏金」「政治とカネ」の大報道
しかし日本はなにも変わらないだろう (中)
(この記事の初出は2023年12月19日)
なにもかも「うやむや」のなかで時は過ぎる
それにしても、安倍政権時代の森友問題、桜を見る会問題など、いまやはるか昔の話としか受け取られていない。自殺者も出たというのに、いったいなにが問題だったのか?即答できる人はいないだろう。
とくに、旧統一教会問題について考えると、安倍元首相が暗殺されなければオモテに出なかっただろうし、オモテの問題になったというのに、なにも変わっていない。
旧統一教会と自民党の癒着は、国家の安全保障、民主主義の根幹を揺るがす大問題なのに、癒着議員は生き延び、
被害者救済法でも、包括的な財産保全についての修正案は自民党などの反対で否決されてしまった。
最近の事件で言えば、木原誠二元官房副長官事件は、明らかに事件なのに、警察は再調査を見送った。スリランカ人ウィシュマさんを死亡させた事件も、入管の責任はなにも問われていない。さらに失敗確実な大阪万博も、なにがなんでも開催される模様だ。
なんで、こんのように、日本の政治、社会は動いていくのか? それは、日本社会が資本主義自由経済を基盤とした社会ではなく、競争を否定し、コネやカネがモノを言う「縁故資本主義社会」だからだ。
謝礼、付け届け、賄賂は日本の社会慣習
裏金づくりは、なにも政治家だけが行っているわけではない。大きく言えば日本人全員が行っている。そうしたオモテには出せないカネが、謝礼、付け届けとして行き来しているのが日本社会だ。
このカネの目的は、便宜を図ってもらうことである。つまり、公務員、政治家相手なら贈収賄と言うことになる。
自身のことで言えば、私は生きるか死ぬかの心臓手術のために、実際の医療費とは別に謝礼を払っている。その額は、いわゆる一般的な額で、それにより優先的に手術してもらった。こうしたカネは、たとえオモテの収入から使ったとしても、相手にはオモテに出さない裏金になる。
医療の世界で言えば、たとえば、医学部の学生が卒業の際に指導教授に付け届け、謝礼をするのは常識だ。論文審査で可をもらうのは1本(100万円)というのは、この世界の掟である。
これは政治家でも同じだ。揉め事が起これば、その解決のために、秘書を通じて、政治家にカネ、あるいはそれに準じるモノを贈る。そうして便宜をはかってもらう。
中央、地方を問わず、なんらかのことが決まるとき、政治家の仲介があるのは当然で、そのときの相場は、政治家の格、力によって変わる。
私に言わせると、パーティ券が一律2万円であるのは安いと思う。世の中には、違法でなければいくらでも献金する人間がいるのだ。
(つづく)
この続きは1月19日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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