2024年、日本経済と円はさらに衰退 なぜもう2度と好景気と円高はありえないのか? (完)

2024年、日本経済と円はさらに衰退
なぜもう2度と好景気と円高はありえないのか? (完)

(この記事の初出は2024年1月2日)

円安で経済復活するというマヤカシ

 物価高騰のインフレから、円安は歓迎できないが、円安によって、海外進出企業が国内回帰するので、日本経済は復活するという見方がある。日本の保守層のなかに、この考えは根強くある。しかし、それは単なる願望で、このグローバル経済の時代にありえない。
 日本の大企業の多くは、グローバルに事業を展開している。製造業にいたっては、生産拠点の多くは海外にある。そういう企業は現地で最適なサプライチェーンを構築し、現地調達、現地生産、現地販売、現地再投資をしているので、日本は素通り、日本円を持つ必要すらない。
 いくら日本の人件費が海外に比べて安くなろうと、それ以外に日本で生産するメリットはない。しかも、国内回帰したとしても、高齢社会で外国人労働者も来なくなった日本でいったい誰が働くというのか。さらにAIによる自動化で、人的労働力は必要なくなっている。
 日本政府が現実をわかっておらず、無定見と思えるのは、こんな状況なのに、海外展開している大企業に補助金を出していることだ。とくに、トヨタのEV電池開発用に1200億円の補助金を出すのは、無定見ぶりの見事な現れだ。
 なぜなら、アメリカはEVに関しては北米で生産されたクルマしか認めないとしているからだ。これでは、日本国民にはなんのメリットもなく、円安を加速させるだけだろう。

量的緩和という「延命策」はやめられない

 日本政府が、マイナス金利や量的緩和、円安進行を放置しているのは、無定見以外にもっと大きな理由がある。
 財政が巨額の赤字を抱え、身動きがつかないからである。こんな状況で、マイナス金利を解除したら、大量の国債を抱える日銀が債務超過に陥り、政府も利払い費が激増して財政破綻が視野に入る。
 もちろん、それ以前に、国債を抱えている中小の金融機関が連鎖破綻し、一気に金融危機となり景気は冷却する。借入金で経営を続けている中小企業、住宅ローンを抱えている国民も破綻する。
 こうなると、不景気と言うより恐慌になる。
 
 ともかく、国債を発行しすぎて、もはや日本は身動きがつかないのだ。したがって、当面、マイナス金利と量的緩和を続けて持ちこたえるしかない。したがって、日米の金利差がどうなろうと、長期的には円安が進行する。
 また、「緩和をやめて利上げに転換し、金融を正常化すべき」という声がさらに高まっても、「いずれ正常化する」と口先で装うだけで、実際にはできようがない。
 今年は首相が代わる可能性が高い。政権交代まであるかもしれない。しかし、こんな状況で、政治がどう動こうと、瀕死の危機にある日本経済を救えるはずがない。国債を発行し続けて延命を図る。それ以外にやりようがなく、それが何年持つかという話である。
 最後にズバリ書いておきたい。日本経済と日本円には未来はない。この国の国家経済と日本円の外で未来を構築すべきだ。

(つづく)

 

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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