日本は6つの分野すべてで世界トップレベル
イプソスは、いったいなにを調査しているのか?
NBIの指数は、「文化」「国民性」「観光」「輸出」「ガバナンス」「移住・投資」という6つの項目で構成されている。これら6つの指数すべてで日本はトップ10以内となっていて、とくに「輸出」はダントツのトップ。「科学技術への貢献」「クリエイティブな場所であること」「製品の魅力」という3つの属性すべてにおいてトップである。
また、日本は「観光」と「文化」でも高評価を獲得している。
NBIの考案者・創設者であるサイモン・アンホルトのコメントが、イプソスのサイトに載っている。彼は、次のように述べている。
「日本がいま、地球上で最も称賛される国になっているという事実は、ドイツと米国を除けば、このポジションに到達した最初の国であり、世界のソフトパワーバランスが目の前で変化していることを裏付けています。新しい秩序の時代、2023年アンホルト-イプソス国家ブランド指数は、アジアの世紀が幕を開けた最初の紛れもないサインです」
サイモン・アンホルトは、ノーベル経済学賞の受賞者で、世界各国、各都市の政策アドバイザーとして有名だが、単なる日本とアジアの太鼓持ちにしか思えない。彼の目は、明らかに曇っている。
観光するのに魅力的なだけではないか
2月8日、財務省が発表した2023年の国際収支統計によると、経常収支は20兆6295億円の黒字と、2年ぶりに20兆円台に復帰した。これは喜ぶべきことだが、その内訳を見るとガッカリする。
というのは、相変わらず貿易収支が赤字で、その額は6兆6290億円。ただし、赤字幅は前年度より9兆円余り縮小している。この貿易収支の赤字の縮小と、旅行収支の黒字3兆4037億円が経常収支黒字の押し上げに大きく寄与している。旅行収支の黒字は、2019年に記録した過去最高の黒字2兆7023億円を大幅に更新した。
つまり、日本は観光によるインバウンドで食っている国になっているのだ。世界にはそういう国がいくつもある。欧州ではスペインやイタリアがその典型だ。アジアではタイがそうだ。
NBIでは、「科学技術への貢献」「クリエイティブな場所であること」「製品の魅力」などがトップ評価だが、それはただの印象にすぎず、実際はとんだ「お門違い」である。
なぜなら、サービス収支、そのなかでもとりわけ「その他サービス収支」の赤字が続いているからだ。これは、デジタル、コンサルティング、研究開発などが国内でできていないことを表している。デジタルに関しては、日本は完全な後進国なのである。
この状況で、なぜ、日本の国家ブランドが1位になれるのか?
単に、外から見て、国際競争力を失ったことで日本は行きやすくなり、しかも文化は外国人に優しいし、食事はおいしいうえ、モノもサービスもよくて安い。つまり、観光地として魅力的なだけではないのか。
40年アップし、その後40年ダウン
「東洋経済オンライン」の最近の記事『日本はこのまま「国家の衰退」を黙って待つだけか』(的場 昭弘 : 哲学者、経済学者)が、興味深い。
著者・的場氏はここで、中東出身でフランス・アカデミー会員のアミン・マアルーフ(Amin Maalouf)が書いた『迷える者の迷宮―西欧と対向者』(Le Labyrinth des égarés. L’Occident et ses adversaires,Grasset, 2023)という本を紹介し、日本の近現代史に疑問を投げかけている。
https://toyokeizai.net/articles/-/731310?page=5
それはまず、日本は世界史史上、非西欧国家として初めて成功した国家であるということから始まる。日露戦争の勝利は、西欧諸国に強烈な印象を与えた。
「全世界が発見したこと、それはひとつの国民が、短い間で数世紀の遅れを追いつき、栄光へと歩み出たことであり、周辺的な、とるにたらない伝統的文化を出て、子供たちを無知と貧困から救い出し、彼らにほこりを与えたことであった」(57ページ)
明治維新からたった40年ほどのことである。しかし、日本はその後「非西欧の希望の星」であることをやめてしまい、第2次世界大戦で西欧に決定的な敗北を喫した。
あまりにも早いアップ&ダウン。なんでこんなことが起こったのだろうか?

この続きは3月25日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
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