郵便遅配、鉄道・バス路線縮小、スーパー閉店—–衰退・縮小ニッポンはどうなっていくのか?(完)

人口減社会に必要な最新テクノロジー

 先月、日経BP 総合研究所が公表した「5年後の未来に関する調査」というのがある。それによると、《国内のビジネスパーソンが選んだ「2030年までに大きな社会インパクトを与えるテクノロジー」のトップ3は、「完全自動運転」「核融合」「介護ロボット」の順番になった。1位の「完全自動運転」と3位の「介護ロボット」は、深刻化する人手不足対策で省人化を実現するテクノロジーとして期待が高い。そのほか、トップ10に入った、「産業メタバース」「マテリアルズ・インフォマティクス」「ドローン配送」も省人化の実現で期待を集めるテクノロジーと考えられる》となっている。
 つまり、時代はこういう方向に進んでいる。
 ここに挙げられたのは個々のテクノロジーだが、大きく言えば、今後、デジタル社会はますます進展する。それにより、あらゆるビジネス、あらゆる産業が大きく変革していく。AI、生成AI、IoT、ロボット、3Dプリンター、ドローン、EV、ブロックチェーン、バイオテクノロジー、遺伝子工学などを知らなければ、今後の社会、生活を構築できない。
 日本のような人口減社会においては、こうした新しいテクノロジーは極めて重要だ。労働力不足をカバーでき、生産効率を大きく挙げられるからだ。
 しかし、日本は、こうした最新テクノロジーに大きな投資をしていない。旧来の産業、システムを守る事ばかりしている。

「炭鉱のカナリア」はすでに鳴かなくなった

 日本の衰退・縮小は、ゆっくりと確実に進んでいる。最近、それが見えるようになってきたが、こうなると、もう手遅れかもしれない。この国の出生数が100万人を切ったのが2016年のこと。それから急激なペースで減り続け、コロナ禍をへて、街の姿、社会のかたちはかなり変わった。
 株価が上がり、春闘で賃金もかなり上がったので、これから日本はよくなるという見方もある。しかし、それはあり得ない。短期的にはよくても、長期的には絶対あり得ない。
 それにしても、コロナ禍であれだけ騒がれた危機管理、デジタル化はいったいどこへ行ってしまったのか? 変わったのは、いまも街を歩けば、半数の人間がマスクをしていることだけではないのか?
 これでは、次のパンデミックが来たり、気候変動や地震による大災害が起きたりしたときは、ひとたまりもないだろう。また、これまでのバラマキ財政で膨れあがった借金をいったいどうするというのか?
 金利を上げれば財政はたちまち破綻の危機となる。
 もう何年も前から、日本の衰退・縮小は警告されてきた。私もその1人だった。
「炭鉱のカナリア」という例え話があるが、炭鉱のなかに危険なガスが充満してカナリアが鳴き止むまでは、誰もなにもしようとしないのが、いまの日本ではないだろうか。
 「炭鉱のカナリア」は危機のサインだが、それが現れても気づかないのが、いまの政治家かもしれない。街の光景が変わり、社会の姿が変わっても、彼らは同じことを言い続けている。この国が後進国になってしまったことを認めたくないのだろう。

「2025年問題」「2040年問題」で破綻確実

 日本の人口は2050年に9515万人となり、約3300万人(約25.5%)減少する。生産年齢人口(15〜64歳)は約3500万人となり、若年層は900万人以上減り、その結果、高齢者の比率は40%を超える。
 それまでに、まださまざまな問題が起こる。以下、その節目となる[2025年問題]と[2040年問題]を示して、本稿を終えることにする。
[2025年問題]
 第1次ベビーブームの時期に生まれた団塊世代が、すべて後期高齢者となる。その結果、総人口1億2257万人のうち、後期高齢者の人口が2180万人に達し、日本は「超高齢化社会」に突入する。最大の問題は、医療サービスを受ける人数が増える一方で、医療従事者の供給が追いつかないこと。「介護難民」が大量に発生し、社会の負担が増す。
[2040年問題]
 2025年問題の延長線上にあり、今度は団塊ジュニア世代(1971年から1974年生)が65歳を超え、高齢者の仲間入りをする。その結果、全人口に占める65歳以上の高齢者の割合が約35%に達し、生産年齢人口は6000万人を下回る。
 そのため、日本の経済成長は止まり、以後マイナス成長となる。
 高齢者人口は、2042年に3878万人でピークに達すると予測され、以降は減っていく。しかし、少子化が進む限り高齢者率はさらに高くなるので、現行の年金、介護、医療、福祉、インフラなど、すべてのシステムは維持困難となり、いずれ破綻する。私たちは、こうした未来を見据えて、今後生きていかなければならない。

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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