5日から全米初の「渋滞税」課金をマンハッタンの60丁目以南で開始したニューヨーク州都市交通局(MTA)。ビジネス街の渋滞緩和の他に、地下鉄などのインフラ整備の財源調達を狙う。同日、ニューヨーク・タイムズが報じた。
長期債券に頼るMTAの予算不足額は150億ドル。渋滞税課金は向こう5年でこれを補う計画だ。1世紀以上前に開業した市内の地下鉄は、地球温暖化に対応できず、高温、洪水など極端な気象現象のインパクトをもろに受ける。通勤客は2017年、遅延運休が相次いだ「地獄の夏」をすでに体験済みだ。
ニューヨーク州のホークル知事は課金が高すぎるとして、昨年6月に実施を中止。これにより予定していた165億ドルのインフラ整備計画は棚上げとなった。この計画には、地下鉄駅のアクセス改善、信号機の近代化、地下鉄2番街線の延長などが含まれていた。
知事はその後11月になって、実施中止を撤回。ピーク時の料金を15ドルから9ドルに減額した。その結果、目指す150億ドル調達が遅れる懸念が出ている。料金は28年までに12ドル、31年までに15ドルに上がる。当初の収入は年間5億ドル。値上げごとに7億ドル、10億ドルに上がると算盤を弾く。
一方、MTAの負債額も膨らんでいる。州は1980年代にMTAによるエージェンシー債券の発行を許可。2000年に1140億ドルだった長期借入れは23年には4240億ドルに達している。その分、金利負担も増えている。MTAは、インフラ投資により利用客が戻れば収入が増え、返済が十分可能だと目論む。ただし、州議会は先月、MTAの最近の支出計画に異を唱えており、先行きに不透明感が増している。それでも「課金しないよりはした方がまし。『地獄の夏』を回避すべきだ」というのがMTA関係者の主張だ。
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