アメリカで医師への不信が深刻化している。折から、ニューヨーク州では医療費が上昇する中、医療の質は低下しているとの報告書が発表された。ウォール・ストリート・ジャーナルが23日、伝えた。

シルビア・オブライエンさん(74)の夫は物忘れや過度に怒りやすくなる症状を示すようになった。主治医は「歳だから」とあしらったが、専門医に診せたところ認知症であることが判明した。「忙しいのは分かるけど、患者がよほど努力しなければまともな医療が得られないなんて」とオブライエンさんは憤慨する。
ギャラップの世論調査でも医師に対する信頼度は2021年から揺らいでいる。信頼度が高いとした回答者は24年には53%。21年の67%から大きく低下。低下の度合いは23種類の専門職中最大だった。
医師は時間に追われ、患者は十分に診察してもらえていないと感じる。ストレスやフラストレーションがたまり、正しい判断が行われているか疑念がわくのも当然だ。医療システムの矢面に立つ医師に健康保険や製薬会社への怒りの矛先が向けられることもある。そうでなくてもSNSには情報があふれている。関節や筋骨格に痛みを感じたキティー・ピーターソンさんは医師からは「気のせいだ」と言われた。SNSで同様の症状や手当の事例を調べ、鍼治療とマッサージセラピーに行き着く。「SNSで命拾いした」と話している。ただし、SNSには偽の情報や誤った情報も含まれているから注意が必要だ。
また、ニューヨーク・コミュニティー・サービス協会(CSSNY)は、州内の医療費が過去30年で3倍に増加した反面、医療の質は低下したとする報告書を発表した。規制緩和で医療費設定が自由になった結果、2020年には州内1人当たりの医療費は1万4000ドル。全米2番目に高い水準に達した。23年の平均的な家庭向け健康保険料は2万6000ドルを超え、個人の負担も増えている。病院は統合が進み、小規模な病院の閉鎖や外来診療の高額化を誘発。患者のアクセスは制限されて、特に低所得者や有色人種は影響を受けている。
報告書では、医療費の透明性を高めるため、独立した「医療費用管理局」の設立を提案。「公正価格法」などにより価格を統一するよう求めている。州政府も医療改革の必要性を認識しており、医療人材不足への対策を含む法活的な改革を模索中だ。
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